新型コロナウイルス感染症が、世界保健機関(WHO)によって「パンデミック(世界的流行)」と宣言された。物流、経済も含めて日常生活にも大きな影響が出ている。感染すると重症化するといわれる高齢者とその家族には、正しい知識と情報が必要だ。
開業医として日々多くの高齢者も診る米山医院院長・米山公啓さんに、空前の“新型コロナ騒動”との向き合い方と感染症対策を聞いた。
◆新型コロナウイルス感染症の何が怖いのか
「新型コロナウイルス感染症は、未知のウイルスであることが最大の脅威でしょう」と、米山さんは言う。
国の報告では、季節性インフルエンザと比べると重症化リスクが高め。かかっても軽症で治癒する場合も多いが、高齢者や基礎疾患(糖尿病、心不全、慢性閉塞性肺疾患など)のある人ほど重症化のリスクが高いという。
「同じ感染症である季節性インフルエンザには抗ウイルス薬や予防ワクチンがあり、一般の人にも経過や対処法が知られています。
それに対し新型コロナウイルス感染症は未解明の部分が多く、有効性が確認されている治療薬はまだない。治療薬開発も急ピッチで進められているはずですが、医療現場もインフルエンザに対するような体制ではないのが現状です」
そして、米山さんが“もう1つの脅威”と指摘するのは世の中の混乱ぶりだ。
たとえばマスク。混み合った場所以外での“マスクの着用による感染予防効果は認められていない”と、厚生労働省をはじめ多くの識者からも発信されているが、買い占めなどにより、医療現場など必要なところに届かない深刻な事態にもなっている。
「テレビやSNSなどの影響も大きい。“〇〇が体にいい”といった軽い健康情報の発想で、不確かな情報やデマも発信され、不安が煽られる。未知のものを恐れる態度は大切ですが、情報を見極めて冷静に対処するべきです」
◆地道な手洗いの励行がモノを言うとき
まずは感染経路を頭に入れておくことが必要だ。
「主な経路は飛沫感染と接触感染です。飛沫感染は感染者のくしゃみ・せきなどと一緒に放出されたウイルスを口や鼻から吸い込んで感染。マスクは完全な感染予防ではないことを心得て、この条件の場所や状況を避けることも大切です。
接触感染は感染者から放出されたウイルスが物に付着し、そこに触れた手などで目や口、鼻を触ることで感染。飛沫より接触感染が多いともいわれます。だからこそ、“手洗い”が重要です。マスクで安心して手洗いが疎かになる方が感染リスクは高い」
高齢者の外出は極力、控えるのが賢明のようだ。
◆安静を侮るなかれ! 免疫力を下げない生活を
軽いかぜが自然に治るのは体に備わった免疫力のおかげ。かぜそのものを治す薬はなく、鼻やのどの症状や頭痛を抑えて免疫力を発揮させるのが、一般的なかぜ薬のしくみだ。
新型コロナウイルス感染症も現在のところ、対症療法しかなく、自身の免疫力を高めておくことが、予防策になる。