街中で颯爽と「オープンカー」を走らせる“クルマ好き”はめっきり少なくなったが、かつて高級外車のイメージが強かったオープンカーも、いまや国産モデルが複数あり、しかも十分に手の届く価格帯で購入できる。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、いま敢えてオープンカーに乗るメリットを挙げる。
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用途に応じて実に多くのボディタイプが存在するクルマ。その中で最も遊びに特化されたものと言えば、何はともあれ「オープンカー」だろう。固定屋根式のクルマに比べれば価格、車体の強度、快適性、室内や荷室の容量確保など、ありとあらゆる面で不利。まさに“伊達や酔狂”のためのクルマである。
当然、そんなクルマに乗るのは少数派だ。日本はもちろん、年間降水日数が少ないアメリカ西海岸やヨーロッパでも走っているクルマの大多数は固定屋根。オープンカーは絶対的にはマイノリティである。自動車メーカーとしても到底大儲けできるようなジャンルではない。
そんな世情ゆえ、グローバルではオープンカーは今や高級車が主体だ。
以前はフランスのメーカーが機械式の可動ルーフを備えたモデルを多数投入していたが、それらは絶滅した。一部を除き、コンバーチブル(折り畳み式の屋根がついたオープンカー)はBMWやメルセデスベンツなどのプレミアムクラス、あるいはマセラティ、ロールスロイスなどのプレステージクラスが中心。オープンエアは高所得層の特権となりつつある。
ところが面白いことに、日本メーカーはその真逆である。本稿執筆時点で高価格帯はオープンモデルがゼロなのに、スターティングプライス300万円未満の価格帯にオープンモデルが3つもある。マツダ「ロードスター」、ダイハツ「コペン」、ホンダ「S660」だ。この3モデルはいずれもクーペの派生モデルではなく、オープン専用ボディを持つという贅沢さである。
高価な商品は硬直化し、安くて小さい商品ほど創造性豊かになるという日本の黄金パターンの是非はともかく、庶民にオープンエアドライブの門戸が開かれているという点で最も恵まれた国となっているのは、消費者としては喜ばしい限りだろう。
そんな日本産大衆オープントリオの一角、コペンで600kmほど早春のオープンエアドライブをやってみた。