門出、旅立ち、巣立ち…別れの季節である3月にはそんな言葉が似合う。人生の節目となる、春の時季を彩った歌はなんだろうか。歌の数だけ「別れの物語」がある――。
1980年代には、柏原芳恵『春なのに』、H2O『想い出がいっぱい』、尾崎豊の『卒業』などの歌が当時の若者の心を捉えた。
なかでも、お笑いコンビ・ペナルティのワッキー(47才)の心に刺さった歌は、長渕剛の『乾杯』だという。同期で親友のロンドンブーツ1号2号の田村淳(46才)がハワイで結婚式を挙げたとき、品川庄司の庄司智春(44才)と共に歌った曲だ。
「冒頭のところで、もう泣きながら歌っていました。それを見て、淳ももらい泣きしながら一緒に口ずさんで…。
デビューしてから何をやるのもずっと一緒だったので、歌詞はまさにぼくらそのもの。あの曲を聴くと、“あの頃がいちばん楽しかったんじゃねえの?”という気持ちがわき上がります。みんなで街に繰り出してナンパしたり、海に行ったり、お互いの家で何をするでもなくボーッとしていたり。そんな他愛もないことが走馬灯のように脳裏を駆けめぐりました。
お金も何もなかったけど楽しかった日々。そんな気持ちも年を取ったら味わえなくなるのかなと、切なさを感じながら歌っていました」
大の長渕ファンのワッキーは、長渕の『さようならの唄』を照れた顔で口ずさみながら、子供の頃のほろ苦い思い出を振り返る。
「親父が転勤族だったので、小・中学校の頃は転校を繰り返していました。中学3年生になる春の時期に北海道から千葉に引っ越すんですが、いまでも関係の続いているくらい仲のいい友達との別れだったので、寂しくてたまらなくて。
それで、当時好きだったクミちゃんという子がいたんですが、北海道を離れる前に意を決して告白したんです。サッカー部の練習前に廊下に呼び出して“ずっと好きだったんだ、つきあってほしい”と、人生初の告白です。
その後サッカーの練習をしていたら、クミちゃんの親友のカリンちゃんに呼び止められて“これ、クミから!”と小さな手紙を渡されました。ドキドキしながら開けて見ると、そこに書かれていたのは“やっぱり友達がいい”という文字。あまりの衝撃に、ぼくはそのまま雪の積もった校庭にパタリと倒れこんでしまって(笑い)。仰向けになりながら、小さな手紙をさらに小さくちぎって上に投げると、雪と一緒に手紙が自分に降り積もって…。