新型コロナウイルスの猛威は収束の気配を見せないが、コロナ感染への恐怖もさることながら、それ以上に深刻なのが「病院閉鎖」の拡大だ。感染者の発覚や院内感染予防などのために医療機関が休診すると、薬の処方や治療・リハビリなど、普段は当たり前だった医療が受けられなくなる。今、まさに全国で起きている病院閉鎖――我々が覚悟しておくべき“最悪の事態”とはどのようなものか。
◆突然〈休診します〉の張り紙
椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症に悩まされる首都圏在住のA氏(48)は2週間に1度、隣町にあるクリニックを訪問している。
3月下旬、いつものように予約済みのクリニックを訪れると、入り口に「休診」の張り紙とこんな注意書きがあった。
〈マスクと消毒用アルコールの在庫が切れ、医療機関向けの卸業者からの入荷のめども立たないため、3月末から1~2週間休診します。4月中旬に再開予定です〉
途方に暮れた様子でA氏がつぶやく。
「毎回、消炎鎮痛剤や胃薬を2週間分処方してもらっていました。日常生活で少しでも無理をすると腰の神経が炎症を起こし、薬なしでは歩行困難になります。ちょうど薬が切れるところなのですが、どうすればいいのか……。新型コロナとヘルニアが関係するとは思ってもいなかったのでショックを受けています」
かかりつけの病院で薬がもらえない──今後、A氏と同じ境遇の人が爆発的に増加することが懸念されている。