日本のお笑い界のスターが、新型コロナウイルスの犠牲となった。志村けん、享年70。『志村けんのバカ殿様』(フジテレビ系)、『天才!志村どうぶつ園』(日本テレビ系)などテレビ番組での活躍はもちろんだが、2006年から毎年開いてきた舞台で彼のライフワークともなっていた『志村魂』への熱量も凄まじいものがあった。週刊ポストでは4年前の2016年、その舞台に向き合う志村に密着していた。志村の生き方が垣間見える、その際のインタビューを再掲する。
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人生お笑い一色。11年目を迎えるライフワークの舞台『志村魂』が始まれば、さらにその度合いが増す。多忙の中、志村けんは、プライベートをどう保っているのか。
「なるべく仕事のスイッチのオンとオフをはっきりしようとしているんですけどね。これがなかなか……。何年か前の年末に、複数の特番出演が重なって、アイデアが煮詰まってしまった。その時、あまりにも胃が痛いから医者に行ったら、『胃潰瘍です。胃に穴が6つあります』だって。医者からは『仕事を休むことです』と言われたけど、休めないからね」
仕事での志村の役割は多岐にわたる。コントを考える「作家」であり、「演出家」であり、当然「演者」でもある。さらに「音楽」「大道具」「カメラワーク」にまで、自分の色を出す。
「仕事が終わったら、仕事のことはなるべく考えないようにしています。でも、仲間と店で酒を飲んでいても、隣のサラリーマンを見て、『この人がこんなことしたら面白いだろうなー』とすぐにお笑いに結び付けてしまう。職業病ですね。家で映画のDVDを観ていても、『これは!』と思ったら、一時停止ボタンを押したり、巻き戻してスローにして見直したりしちゃうから。夢にネタが出てくることもある。どこからが仕事なのか、自分でもよくわからなくなっている」
まさに仕事漬け。体力的にきつくないのだろうか。
「ジムに通う人もいるけど、お笑いに筋肉はいらないからね(笑い)。たまには体を動かそうと犬の散歩に行くんだけど、夏は暑いから嫌だし、冬は寒い。雨の日も風の日もダメ。だから散歩はほとんどトレーナー任せ。たまに岩盤浴で汗をかいて……体、まったく動かしてないな。舞台では昼夜2回公演が多いからクッタクタですよ。公演のあとに風呂に入るんだけど、コントのおじいさんのようなヨタヨタとした歩き方になっているからね」
そんな疲労を吹き飛ばすものが、2つあると志村は言う。
「ひとつはなんといっても舞台を見に来てくれたお客さんの笑顔です。大きな笑いのための前振りが計算通りにはまり、最後に大爆笑をとって暗転。これは気持ちいいです」