猫は年に2~3回ほど発情期を迎え、2~4月がピークとなる。この時季は、発情中のメスのフェロモンに誘われて、オスが追いかけるケースが多発し、結果、猫の失踪が増える。突然いなくなってしまった愛猫を捜し出すにはどうしたらいいのか。「ペット探偵」として猫の失踪解決率80%で、ペット捜索を専門に行う「ペットレスキュー」代表・藤原博史さん(50才)に犬と猫の捜し方の違いを聞いた。同社を立ち上げてから23年の間に、約3000件の依頼を引き受けてきた。
◆チラシを作り、毎日森を捜した
今回の依頼主は吉田茂夫さん・弘樹さん親子(ともに仮名)。5日前、茂夫さんが、生後10か月のオスのキジ猫・モグと散歩に出かけ、近所の森でリードから手を離した途端、逃げてしまったという。「まさか逃げないだろう、という気の緩みが原因です」と弘樹さんはうなだれた。
あわてた茂夫さんはチラシを60枚ほど作成し、近所に投函。弘樹さんも捜索し、モグのリードを森の斜面で発見した。
きっとこの近くにいる──そう期待して捜し始めたが、どこをどう捜したらいいのか、捜索範囲の広さに途方に暮れてしまった。
森は、吉田さん宅から車で5分ほどの位置にある。家の窓から脱出したケースなどは、自力で戻ってくることもあるが、それだけ距離があると、自然な帰宅は期待できない。モグのトイレは「見るたびに胸が締め付けられる」と弘樹さんは言う。吉田さん親子は専門業者への依頼を決めた。
「迷子捜しの基本は、(行方不明になってから)できるだけ早く、多くの目で行うことに尽きます」
吉田さん宅に到着したペット探偵・藤原さんはそう語り、聞き取り調査が始まった。行方不明になった日時や場所、猫の特徴や性格など、40項目に及ぶ質問を通して、状況を詳細に聞き出しながら、モグの「カルテ」を作成していく。「カルテへの記入も大切ですが、もっと大切なのは雑談。何気ない話の中に捜索のヒントが隠されているんです」と藤原さん。飼い主との会話からヒントを得ることが多いという。
聞き取り調査を終えた藤原さんは、吉田さん親子と現場へと向かった。
◆猫は聞き慣れた声に反応する