韓国映画・『パラサイト』が第92回アカデミー賞作品賞をはじめ、各国の映画賞を総なめにし、韓国映画に世界中から注目が集まっている。その背景には、「映画産業が活性化されるさまざまな下地が国家レベルできている」と、作家の康熙奉さんは語る。
「金大中政権以降のこの20年で、国家は人材育成など映画産業に対する支援を行い、企業も積極的に投資。各自治体も非常に力を入れて撮影所などを作っています」(康さん・以下「」内同)
さらに、「隣の家の持っている箸の本数まで把握している」と揶揄されるほど、他人に対する関心が強い国民性も、映画やドラマの高い人気につながっているという。
「2019年の韓国での観客動員総数は約2億2000万人といわれていて、国民が5200万人ですから、だいたい1人平均年4本は映画を見ていることになります。動員数1000万人を突破した映画もやたらと出ている。すごいですよね(笑い)。外国作品を除いた国内作では、これまでに19本が1000万超え。
2019年は『パラサイト』と『エクストリーム・ジョブ』の2本でした。鑑賞料が日本の半額程度と比較的安く、家族やカップルの娯楽として定着し、シネコンの発達という映画環境が整っていることも大きいです」
さらに康さんは韓国は日本や諸外国に比べて、映画の題材に恵まれているともいう。
「『シュリ』(1999年)以降は北朝鮮との敵対関係をうまく題材として生かしたスパイアクションやミステリーを作り、『1987、ある闘いの真実』や『タクシー運転手 約束は海を越えて』(ともに2017年)などの、戦後の長い軍事政権から民主化までを取り上げた作品や、さらに1997年、外貨が底をついて国家が破綻しかけた危機を描いた『国家が破産する日』(2018年)など、映画のテーマには事欠かきません。
特に1997年の経済危機は、『パラサイト』でも取り上げられた格差問題など、いまの韓国に非常に大きな影響を与え、国を激変させる契機となった事案なので、現在の韓国社会を知ることができる作品です」
◆ザ・ムービースターがけん引する映画界