外出自粛要請だけでなく、カラオケ、バーなど業態を指定して利用を控えてほしいと東京都の小池百合子知事が訴えるほど、新型コロナウイルスの感染拡大が危険な域に達しつつある。急速に街から人が消えたことで、突然、仕事を失い、生活がたちゆかなくなっている人たちがいる。事業主への貸付制度や給付への対応が遅いことにも不満がつのっている。政府は収入減となった世帯に30万円を給付する方針を打ち出したが、働く人たちの生活を守る視点に欠けているのではないかという批判は根強い。ライターの森鷹久氏が、コロナ騒動で仕事が激減した人たちの不安についてレポートする。
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今年3月、千葉県市川市のスポーツジム利用者の複数人から、新型コロナウイルスの感染が発覚した。ジムはすぐに閉鎖、マスコミ各社がジム前に集まり、取材合戦が繰り広げられたことも記憶に新しいが、その裏で、一足先に生活が破綻した人たちが存在していたことは、あまり知られていない。
「インストラクターといっても、フリーランス契約です。仕事がなくなり、生活は即ダメになりました。仕事をしただけ貰える一方で、やっただけしか貰えないという私たちにとって仕事がない、というのはその瞬間生きていく糧がなくなるということ。報酬が高い仕事でもないし、貯金はごく僅か。フリーランスに対する休業補償も、政府は4000円少しと言っている。これじゃ家賃を払って終わり。申請も、勤務先の管理者の印鑑が必要とか煩雑で、本当は”出したくない”という出し渋り感が見え見え。工場での日雇いアルバイトで食いつないでいますが、正直生きた心地がしない。もう無理です」
こう話すのは、千葉県市川市に隣接する某市にあるスポーツジムの元インストラクター・花田新太郎さん(仮名・30代)。スポーツジムでのコロナウイルス感染拡大が発覚し、花田さんの勤務するジムも、期間未定で閉鎖が決定した。会社員とは違い、インストラクターのほとんどがフリーランスであったため、報酬は出勤した分だけ。当然、休業補償の類はないし、今後ジムが再開する見立てもない。
「海外では、フリーランスにも十分な保障が支払われたり、一律の現金給付などの措置が取られるとニュースで見た。日本のフリーランスには、私で言えば本来の1日ぶんの5分の1、約4千円の給付しか受けられないと聞いています。働き方改革とか、副業奨励とかありましたよね? 結局、私たちは見捨てられていませんか?」(花田さん)
花田さんのように、平時であれば「普通に生活できた」というフリーランスは少なくない。彼ら、彼女らの多くが、コロナウイルスの影響により苦境に立たされているわけだが、声を出せるだけ、まだマシかもしれないという事例も存在する。
「半減どころじゃありません、このままいけば店は潰れます。女の子たちも様々な事情の子が多く、すでに生活が破綻し、お店でお金を貸し付けています」
沈痛な面持ちで筆者の取材に答えるのは、千葉県内で派遣型風俗店を営むU氏(40代)。そもそも2~3月は、業界にとっても閑散期。売り上げの落ち込みは想定済みだったが、2月下旬ごろから新型コロナウイルスに関する報道が続くと、客も感染を心配したのかオーダーがほとんどなくなったと嘆く。
「最初は常連さんが”大変だね”と来てくれる場合もありました。店としても、消毒やうがいを徹底するなど対応していましたが、マスクをして接客するわけにもいかず…。現状は前年同月比の8割減。ただ、この困窮を訴えたところで、そういう商売をしていたんだからしょうがないだろいうと言われるのがオチ。貸付してもらえる業種がいくら増やされても、うちのような仕事だけは除外だと言われています。他に行き場がなくて困った末に働いている女の子が少なくないのに、あまりに現実を無視されると、人間としてカウントされていないような気になります」(U氏)