新型コロナウイルスの“瀬戸際”は長く続いている。感染を防ぐのはもちろんのこと、生活を成り立たせていくかも喫緊の問題となってきた。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。
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4月1日以降、営業を休止する飲食店が一気に増えた。それもそのはず。一般市民に「自粛を要請」するということは、飲食店に客が来ないことになる。店を開けていれば仕入れにカネを払い、人を雇っての仕込みも必要だが客は来ない。これでは心身ともに削られてしまう。
4月3日、この原稿を書いているいま、新型コロナウイルスの感染は全世界的に日常的な光景となり、主要国で国民に現金支給や休業補償といった措置を講じていない国を探すほうが難しくなってきている。当然だ。国民を護るのが国の責務である。「経済を回す」ことも重要だが、現在はその遥か手前の「生活支援」が必要な状態だ。にも関わらず、そこに対する明確な支援策が見えてこない。そのすべがなければ社会不安は広がる一方だ。
もっとも救済の仕組みがまったく手つかずというわけではない。既存の仕組みの適用や拡大といった形で、打撃を受けた個人店や中小企業への助成制度などは人知れず拡充されているが、「マスク問題」などわかりやすいニュースに埋もれて、伝わりにくくなっているのが実情だ。
●金融庁による金融機関への要請
3月は期末を迎える企業も多かったこともあり、3月6日の時点で金融庁が銀行等に対して、事業者の資金繰り支援に要請を出している。既往債務についても、「元本・金利を含めた返済猶予等の条件変更について、迅速かつ柔軟に対応すること。また、この取組状況を報告すること」と強めの要請を行った。
セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)やセーフティネット保証などの活用も含め、業績の悪化した企業の救済を徹底してほしいという要望を出している。詳細は前記事の「新型コロナ禍で経営が切迫する飲食店がサバイバルする方法」にて。
●雇用調整助成金の特例措置のさらなる拡大
本来「雇用調整助成金」は経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業者が雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度だ。この制度に4月1日から6月30日までの間、「緊急対応期間」を設け、1か月5%以上生産指標が低下した事業主(全業種)について、休業補償の助成率を最大90%まで上げ、雇用保険被保険者でないパート、アルバイトにまで拡大した。
事業主がこの仕組み自体を知らずに苦慮しているケースもある。働き手から一言口添えする手もあるかもしれない。問い合わせ先は「雇用関係各種給付金申請等受付窓口一覧」で検索して、厚生労働省の全国の問い合わせ窓口の一覧ページへ。
その他、事業者向けの制度は経済産業省が「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」という文書で「資金繰り」「設備投資・販路開拓」「経営環境の整備」について、助成の仕組みの概要や問い合わせ先が記されている。
●家賃など生活者向けの給付金もある
事業者向けのサポートだけではない。今回の感染拡大の影響で職や住居を失ったり、家賃の支払いに苦慮する人が出てくるはずだ。そうした人向けの「住居確保給付金」という仕組みがある。就職活動中の家賃を原則3か月間、最長9か月間受け取ることができるというものだ。
東京都の中心部では2人世帯で月収19万4000円、預貯金78万円以下といった条件を満たした場合、毎月6万4000円を上限に”家賃”が支給されるという。条件は世帯の生計を支えていた者が2年以内に職を失い、ハローワークを通じて求職活動をしていることなど。詳細は自治体によって異なるので、都道府県の「自立相談支援機関」に確認を。