「イブプロフェンなどの抗炎症薬の服用は症状を悪化させる可能性がある」──フランスの保健相は3月14日、こうツイッターで警告した。その直前に、医学誌『ランセット』に掲載された仮説を踏まえたものだ。
咳が出る、のどが痛い、熱っぽい…そんな症状があれば、つい頼りたくなるのが風邪薬。ただ、その症状がもし新型コロナウイルス感染によるものだったら、のまない方がいい薬があるという。ドラッグストアに並ぶ市販の風邪薬の半数以上に含まれる成分が、解熱鎮痛作用のある「イブプロフェン」だ。
薬剤師で銀座薬局代表の長澤育弘さんが指摘する。
「イブプロフェンは『アスピリン喘息』という喘息を誘発する副作用があるので、肺炎など呼吸器系の疾患を引き起こす新型コロナウイルスと相性が悪いと考えられます。
また、イブプロフェンには体内の『プロスタグランジン』という物質を抑制し、熱を下げる作用があります。プロスタグランジンは熱や痛みを引き起こすことで、体内の免疫力を活性化させ、異物であるウイルスを撃退する働きをします。多くの人は自分の免疫力でウイルスに打ち克ち、軽症で済んでいますが、薬で熱を下げることで免疫力が落ち、重症化を招く可能性がある」
イブプロフェンと同じ「非ステロイド系消炎鎮痛剤」の一種であるロキソプロフェンやインドメタシンを配合する薬も避けた方がいいという。
「古くからあるイブプロフェンはフランスで使用率が高いので、保健相が名指ししたのでしょう。同じメカニズムで作用する解熱鎮痛剤はのまない方がいい」(長澤さん)
ちなみに、WHO(世界保健機関)も日本の厚労省も「科学的根拠がない」と指摘するが、そもそも相手は未知のウイルス。薬を服用している感染者と非感染者のデータを比較研究しようがないから、現状で悪影響のはっきりとした根拠が示せるわけがないが、用心するに越したことはない。鼻水などに効く花粉症の薬も、感染が疑われるときは避ける方が無難なようだ。
「ひどいアレルギー性鼻炎の場合、内服用の『ステロイド』が処方されることがあります。しかし、ステロイドは免疫を抑える効果があるので、できれば避けた方がいい。
ただし、急に服用をやめるとショック症状を起こすことがあるので、不安な場合は医師に相談してください」(長澤さん)