テレワークや時差通勤、有休消化──異例の幕開けとなった令和2年の新年度。社会情勢は混乱を極めるものの、自分の健康状態を維持するために、見つめ直す機会は必要だ。実際、多くの企業では5月に定期健康診断が実施される。すでに勤務先などから「定期健康診断のご案内」などの書類を受け取った人も多いだろう。
配布された健診案内を前に、眉間にしわを寄せながら52才の飯山佐智子さん(会社員・仮名)が話す。
「これまで長い間、『問題ありません』で済んでいたのに、昨年は高血圧に加え、コレステロール値も基準値より高いと言われてしまい、それをきっかけにとうとう薬をのみ始めました。
毎朝、出勤前に血圧も測るようになりましたが、日によって数字がまちまち。数値が高ければその日中、気になってしまう。今年は中性脂肪の値も気になるし、健診前はまるで試験開始前の受験生のような気持ちです」
飯山さんが一喜一憂するように、私たちが健康診断の結果をもとに生活習慣をあらためようとするのは、「ここからここまでは問題なし」という基準値が決まっているおかげ。しかし、その“物差し”がおかしいと主張する専門家も少なくない。
◆20代と60代が同じ基準
全国70万人の健康診断データを分析し、基準値を算出した経験を持つ東海大学医学部名誉教授の大櫛陽一さんはこう話す。
「現在、特定健診で定められている基準値の中には、厳しすぎるものが多い一方、基準が緩く設定され、見過ごされているケースもある。数字だけを見て基準を超えた、とか、基準内だ、と一喜一憂することにはあまり意味がないのです」