認知症の85才母の介護を担うことになったひとりっ子のN記者(56才・女性)。新型コロナウイルスの影響で特に重症化することが懸念される高齢者に対し、この情勢においては、様々な配慮が必要となる。高齢者が集まるデイケア施設はどのような状況になっているのだろうか。
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「3月28日はR姉さんの七回忌よね? 親戚みんな集まるんでしょ?」と母からの電話。
「いま、新型コロナウイルスが大変でしょ? 高齢者が感染すると入院しなきゃならないから、延期にしたんだよ!」
同じ話に同じ返事を繰り返すのはもう慣れっこだが、この日の電話は4回目。さすがに疲れて、つい語気を強めた。
世の中、新型コロナウイルス一色だ。毎日感染者や死亡者の数が報道され、医師や研究者や政治家が喧々囂々、母の住むサ高住も訪問自粛で閑散としている。認知症の母もそれなりに、不穏な空気を感じているのだろう。
“外出こそ何よりの認知症対策”と、お出掛けの予定をカレンダーに目立つように記したことも、いまとなっては厄介事を増やすことになった。
この閉塞感に苛まれているのは私も同じだ。
フリーランスだが幸いいまのところ仕事に支障はなく、外出先では消毒を励行、用事が済んだらさっさと帰宅。が、電車の中では疑心暗鬼、街のドラッグストア前ではマスクを巡って小競り合い。どこも嫌なムードだ。すると変な力が入ってしまうのか、50代の肉体は全身ガチガチに。
しばらくパソコンに向かえば立ち上がるのにもひと苦労。首も腰も膝も曲がるところがすべて錆び、動かすたびにギィィと鳴る感じ。歩き出そうにも足が出ないこともある。
「特に高齢者は動かないとすぐに筋力が落ち、歩けなくなる」と、取材した多くの老年医学の専門家が口をそろえるが、まったく他人事ではないのだ。
ふとサ高住の部屋で恍惚としている母の姿が浮かんだ。何度も電話をして来られるのはうんざりするが、電話が鳴らなければ一気にボケたのではと、そら恐ろしくなる。