◆怒りや失望の根源にある「不公平感」
今回の30万円給付金の最大の問題は不公平感が顕著になってしまったことだ。極端な例かもしれないが、こんなケースを比べてみよう(あくまで仮定の設定)。
【A子さん(36歳)】
看護師として都内の病院に勤務し、コロナ患者を担当。高齢の患者に対しては食事や排泄の介助もしなければならず、常に感染の危機にさらされている。自身はもちろん、子どもや夫への感染リスクもあるなか、日々業務に追われ、へとへとだ。世帯主の夫は残業代が減ったぐらい。
【Bさん(28歳)】
単身世帯の男性フリーターで、さまざまなバイト生活で暮らしてきた。コロナ騒動以降、バイト先の飲食店が営業不振に陥り、2月以降仕事がなくなった。月収はほぼゼロ。今は裕福な親からの資金援助で家賃、光熱費など生活費を賄っている。日中は部屋でオンラインゲームをやり、夜はたまに憂さ晴らしに“街コン”に出かけている。
【Cさん(38歳)】
昨年秋の消費税増税、コロナショックで勤務先の観光関連会社が経営不振に。解雇こそ免れたが、新年度の4月から給料が2割ダウンした。妻は乳児の子育て中で無収入。この分では4月の給与は35万円あるかないか微妙だ。
さて、このうち30万円の給付を受けられるのはどのケースか。感染リスクの恐怖と闘いながら患者の面倒を見ているA子さん一家は、対象外。Bさんはそもそも収入が低いうえ、2月以降は親からの援助以外の収入がないので、申告すれば給付される可能性が高い。Cさんは3人世帯。3人世帯の住民税非課税世帯水準の年収目安は204万円。月収で約17万円だ。給付対象はその水準の2倍以下だから34万円未満(東京都の場合)。まさにボーダーラインだ。
それぞれ、いろんな形でコロナの影響を受けている3つの世帯だが、給付を受けられるかどうかはマチマチなのである。
こうした不公平感はネット上にも溢れている。
「マジメに所得税を納めているのに支給されない人がほとんどのような気がする。なぜ平等に給付してくれないのか」
「5人家族です。学校が休校で食費がすごくかかっている。仕事には影響ないから給付の対象にならない。出費増をどうしてくれるのか」
「同じ日本人なのに。給付金が条件付きって優劣をつけること自体おかしい」
「休みたくても休まず、命がけで働いてくれている医療従事者の方たちが対象にならないのはどう考えてもおかしい」
「国民全員に自粛要請しているのだから全員に支給すべき」
国民の怒りは爆発寸前だ。