ついに日本でも新型コロナウイルスの感染者・死者が急増し始めた。しかし医療機関では「コロナ感染」よりも恐ろしい事態が起こり始めている。執刀日が決まっていた手術などを「後回しにされる患者」が出てくるのだ。ヘルニアなどは確かに直ちに命に別条がある病気ではないものの、放置すると一生消えない麻痺が残る恐れがある。さらには“がん手術難民”発生の恐れさえ指摘されている。
手術だけでなく「入院」を要する患者にも深刻な事態が起こっている。まずは厚労省新型コロナウイルス感染症対策推進本部の通知を見てみよう。
〈(重症者を優先的に受け入れる)医療機関においては、感染が更に拡大した場合には、必要に応じて医師の判断により延期が可能と考えられる予定手術及び予定入院の延期も検討する〉
この通知が発表されたのは3月1日。その後、まさに〈感染が更に拡大した〉状況が訪れた。結果、手術だけでなく、予定されていた入院が延期されたり、すでに入院していた患者が別の病棟に移されるケースが起こり始めているのだ。
背景には、感染者数の増加に伴うベッド数の不足により、自治体が「新たな入院患者の受け入れ先」の確保に躍起になっている事情がある。小池百合子・東京都知事は、3月30日の会見でこう語った。
「現在、500床の受け入れ体制を確保いたしております。最終的には都内全体で4000床を確保することを目標とします」
多くの病院が緩和ケア病棟、精神科病棟などに新型コロナ患者を受け入れ始めているという現状がある。しかしその結果、別の重病を持つ入院患者がベッドを奪われては本末転倒だ。