緊急事態宣言が発動された。5月のゴールデンウイークまでの約1か月間、日本はまさに正念場を迎える。厚生労働省関係者はこう語る。
「日本が絶対に避けなければいけないのが、死者1万人を大幅に上回るイタリアやスペイン、感染者30万人を超えたアメリカのようにならないことです。彼らは2か月前、未知のウイルスの恐ろしさを見誤り、対策は遅く、不完全だった。彼らが辿った道を、日本は繰り返してはいけない」
2002年から流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)は終息宣言が出るまでに全世界で約8000人の感染者と約800人の死者を出した。しかし、新型コロナウイルスはすでに感染者が120万人を超え、死者は7万人に迫る(4月6日現在)。
なかでも、顕著なのが欧米諸国の感染者の多さだ。感染源の中国を抜き、感染者数の多さはアメリカ、スペイン、イタリアの順となっている。
なぜ爆発的感染拡大を招いた国とそうではない国があるのか。その理由の1つとして浮上しているのが、「BCGワクチン」の接種状況である。
BCGワクチンは感染症である結核を予防するためのワクチンで、1940年代以降に世界各地で普及した。日本でも定期接種の対象となり、上腕部に2回行う9本針の「はんこ注射」として有名だ。
しかし、前述のスペインでは結核罹患率の減少に伴い、1980年代以降、接種が中止され、アメリカ、イタリアでは医療従事者などのハイリスク群のみに接種するようになった。
そうしたワクチン接種率が低い国で、新型コロナが猛威を振るっている。たとえばスペインでは感染者が13万人を超えて「医療崩壊」を招くほど壊滅的な打撃を受けた。一方で、現在も全国民へのワクチン接種を実施している隣国のポルトガルの感染者は、およそ1万人と圧倒的に少ない。定期接種継続の差が、現在の被害状況に関係している可能性があるのだ。血液内科医の中村幸嗣さんが指摘する。