「突っ込んじゃいけないと思って、そうなっただけなんですけどね。間ができちゃったところも、わざと空けたわけでなく、どうしようと思って考えてただけで。でも、ライブ終わったとき、相方が『これで行こう』って。これがお笑いなの? って思いましたけど、僕自身は、いちばん楽だったので。それまでは相方が何かしゃべったら、自分も必ず何か言わないといけないと思ってたんですけど、それもやめました。『なんで黙ってるの?』って聞かれたら『言うことがないんで』と言えばいい。これでいいんだ、と。そこから、間を味わう余裕も出てきて、少しずつ、自分たちの色というか、武器と呼べるものが出せるようになってきたんです」
ただ、コントでは武器になっても、漫才でそれが通用するかは未知数だった。
真栄田は漫才のネタを作るとき、基本的には、コントの中の会話部分を抜き取り、それらをつなぎ合わせた。
すると、改めてその作業をしたとき、思ってもみない現象が起きた。コントから小道具らの「装飾」を取り除いたとき、2人の会話のやりとりはさらに引き立った。つまり、さらに強力な武器となったのだ。(第5回に続く)
文●中村計(なかむら・けい)/1973年千葉県生まれ。同志社大学法学部卒。著書に『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇』など。ナイツ・塙宣之の著書『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』の取材・構成を担当。近著に『金足農業、燃ゆ』。