テレビ画面を舞台に、コントローラーなどを繰って遊ぶテレビゲーム。老親世代がかつて子供に「ゲームばっかりやっちゃダメ!」と叱っていたあのゲームが、いま、高齢者に新しいワクワクを提供し、注目されている。地域の“通いの場”などで行われるアクティビティーに取り入れ、特に集いが苦手な男性にも大人気だという。仕掛け人の1人、日本アクティビティ協会理事の川崎陽一さんに聞いた。
◆やるのも見るのも楽しい 高齢者に新たな刺激
「70代、80代の人は、“自分が”テレビゲームをやるのはほぼ100%が初挑戦。子供が夢中になる姿を怪訝な目で見ていたのも今は昔。操作に戸惑うことより、自分のアクションで画面の中が展開するおもしろさ、達成感、対戦系なら駆け引きや興奮…と、初めての刺激にどんどん引き込まれています」
バンダイ時代に培った“遊び”の楽しさやワクワクさせる仕掛けを、高齢者の健康延伸に生かそうという川崎さん。その効果を脳科学の観点でも評価すべく、諏訪東京理科大学教授の篠原菊紀さんとともに検証実験を実施。ドライビングシミュレーションが楽しめる『グランツーリスモSPORT』をプレー中、認知機能低下予防に重要な前頭前野の活動が有意に高まることがわかった。また前頭葉機能、認知機能全般の改善も見られた。
「別の実験で、画面や音楽に合わせてタップする『太鼓の達人』を週1回、10週にわたり行うと回を重ねるごとにうまくなるのですが、さらに注意力、判断力、先を見て予測する能力の向上が示唆されるとの評価も。たとえば生活の中では転倒予防にもひと役買いそうです。このように楽しんで生活機能や健康を維持できる“健康ゲーム”を提案したいと思っています」
実験ではもう1つ注目すべきことが明らかになった。
「ゲームをやっている人だけでなく、後ろで画面をのぞき込み、応援したり一緒になって体を動かしたりする人も、同様に機能が向上。スポーツ観戦者のような連帯感、高揚感がまたよいわけです。みんなでワイワイやることにこそ意義があるといえます」