病気は一度治っても再び発症する──そんな「再発の恐怖」をまざまざと思い知らされるのが、毎年多くの死亡者を出しているがんである。がんを最初に告知された際の動揺を乗り越え、つらい治療を経てようやく治ったと思ったのに、「再発です」と医師から告げられたときのショックは計り知れない。
がんの再発とは、最初の手術をした後に取り切れなかったがんが再び現われたり、抗がん剤や放射線治療でいったん縮小したがんが大きくなることを指す。
治療後に最初のがんが発生した場所から血液やリンパの流れに乗ってがん細胞が移動し、別の場所で増殖する「転移」も再発に含まれる。
東京大学医学部附属病院放射線治療部門長の中川恵一医師が「再発しやすいがん」として挙げるのは、男性の罹患数2位の前立腺がんだ。
「前立腺がんはステージI~IIIの5年生存率が100%で治りやすいがんの代表格ですが、再発しやすいがんとも言えます」
前立腺がんは大半で自覚症状がなく、検査などで発覚したら手術か放射線治療を行なう。早期発見・早期治療の効果は高いが、再発した場合には危険な落とし穴がある。
「前立腺がんは治療から5年以上経過してから再発することがあり、さらに再発するとまれに全身の骨に転移することがあります。
骨転移が進むと、骨髄の造血機能が低下して貧血が起こりやすくなったり、脊椎のがんが下半身の神経を圧迫して歩行困難や痛み、下半身の麻痺を引き起こす可能性がある。最悪の場合、血小板が減少して脳出血などで命を落とすことも少なくない」(同前)