世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。積極的にPCR検査を実施する国が多いが、日本ではなかなか検査が受けられない状態が続いている。
一方では、日本では感染経路をたどってクラスターを発見し、濃厚接触者を徹底調査することで感染の拡大を“阻止”してきた。しかし、現在は感染経路を追えない人が激増している。
「だからこそPCR検査の拡充が必要なんです」とわだ内科クリニック院長の和田眞紀夫さんは指摘する。
「いまのクラスター対策では追いきれない感染者が市中に蔓延しつつある状況です。どれくらい感染が広まっているか状況を知らないままにしておくと、感染が本当に抑えられているかどうかすらもわかりません」
2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学特別教授の本庶佑氏は4月6日にPCR検査の急速な増加を求める緊急提言を発表した。同じくノーベル賞受賞者の山中伸弥・京都大学教授も検査体制の強化を提言している。
安倍首相は4月6日にPCR検査を1日2万件にすると表明したが、あまりに少ない。日本の15倍以上の検査数を誇るドイツは感染者数こそ多いが、致死率は1.3%でイタリア(13%)、フランス(8%)など近隣国よりはるかに低い。理由についてドイツ国立ロベルト・コッホ研究所は「初期段階で広く検査を行い、症状の軽い段階で感染者を発見できたため」と分析する。
日本では検査数を増やすと患者が激増して医療崩壊が起きるとの声もあるが、和田さんは「検査をしないと医療崩壊が近づく」と指摘する。
「きちんと検査を拡充して、感染がどれだけ広がっているかを把握し、程度に応じた治療をすることが大事です。検査なしでは、市中感染の拡大や院内感染を食い止められません。“軽症者や無症状者は検査も治療も不要”との声もありますが、最近は軽症から急速に悪化して死に至る例が報告されます。ウイルスが変異した可能性もあり、まずは検査をして診断をつけることが重要です」
◆「検査、検査、検査」
PCR検査が受けられないなかで注目されるのが「抗体検査」だ。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんはこう話す。
「ウイルスに感染すると、体内の防御システムが働いて『抗体』ができます。感染早期の場合には『IgM抗体』ができ、感染から数週間後に『IgG抗体』ができる。これらの抗体の組み合わせを調べて、ウイルスに感染したかどうかを判別するのが抗体検査です。どちらの抗体も出てこない場合は、感染していないという結果になります」