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東京の片隅の小さな居酒屋店主が「意地でも営業する」理由

「ここが開いてないと困る人もいる」(イメージ)

「ここが開いてないと困る人もいる」(イメージ)

 新型コロナウイルス感染拡大をこれ以上の規模にさせないため、7都府県に対してだった非常事態宣言が全国へと拡大された。東京都が業態や施設を指定して休業要請をし、営業時間短縮などを求めていたが、さらに全国に広がりそうだ。仕事や人生がいまひとつうまくいかないと鬱屈する団塊ジュニアやポスト団塊ジュニアを「しくじり世代」と名付けた『ルポ 京アニを燃やした男』著者の日野百草氏が、今回は、短縮営業要請されたことでかえって忙しくなったというある40代の居酒屋店主の本音をレポートする。

 * * *
「休業なんかしないよ、これだけお客さんいるんだから」

 外出自粛令、非常事態宣言、そして休業要請にまで至った東京最初の週末10日、金曜日。コロナ騒動なんのその、都心部の新宿や池袋、新橋などの大繁華街はともかく、少し外れた城東の小さな歓楽街はスナックも居酒屋もチェーン系以外は営業している。むしろスナックはランチに、居酒屋は昼呑みにと必死だ。

 私は意を決してひときわ目についた居酒屋を訪ねる。ここは外でも呑めるように簡易なプラスチックテーブルと椅子が用意されていて、一番おおっぴらにやっている。三密どころじゃない環境で賑わっているが、心臓に持病のある私からするととんでもなく怖い。

「いらっしゃい」

 店主は手際よく焼き鳥を返しながらカウンター越しに声を張る。客席は常連さんでいっぱい、みんなほろ酔いで楽しそうだ。

「この辺りは夜とか昼とか関係ないんだ。そもそも昼酒なんか普通だし、時短要請とか関係ないね」

 店主はよっちゃん(40代男性・仮名)。居酒屋は10人も入れるといっぱいで、外にも一部があふれている。地べたにしゃがんで呑んでいるカップルがいたり、外のテーブルでもノートパソコンを広げた若者がソースコードらしきものを組んでいる。これもテレワークか。

「常連さんが毎日来てくれるから閉められないね、そんで開けてたら自宅待機だ外出自粛だで行き場所のない連中までうちの客になっちゃった。商売繁盛でコロナさまさまだよ」

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