ストレスは日々募る。感染対策の是非をめぐってはそれぞれに感じるところがあるだろう。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が為政者が発するメッセージについて考察した。
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日本全体がコロナ危機に疲弊しているさなか。疲弊をより一層深める可能性をはらんだコンテンツを、わざわざ投下してくれる国家のトップ。あの「うちで踊ろう」動画騒動について、首相サイドは「35万のいいねをもらった」と自賛。「批判の声が届いているのか」と問われ菅官房長官は、「若い人に対しての発信、配信として取り入れさせていただいた」と返答。一言でいえば「あれで良かった」という総括です。そして畳みかけるようにいずれポストに届くであろう二枚の布マスク……。
とはいえ、「批判ばかりしていてもダメだ」「揚げ足取りをするな」という意見も聞かれる昨今。たしかに建設的な提案が大事だと思います。ぜひ、安倍首相はこれまで自己アピールにかけてきたすべての手間・暇・人材・コストを、今後は医療崩壊を回避する喫緊の対策、発熱外来の整備や防護服の増産、治療薬アビガン等の供給に注入してください。吉村洋文大阪知事の言うように「政治家はボロボロになったら使い捨てでいい」という仕事の仕方にシフトしてください。
表情、しぐさ、身につけているもの。テレビや動画での情報発信は当然のことながら言語以外のメッセージも含まれています。すべてがメッセージを発しています。安倍氏は自分の布マスク姿が発信している「言語以外のメッセージ」をどこまで自覚し理解しているでしょうか? いまだにマスクのサイズが小さすぎることは? 小学生の給食マスクと同じような素材の安っぽさは? 「たった一枚のマスク顔のビジュアルがこれほど雄弁に物語る」という自覚を、国のトップなら当然持っていてよいはずです。
「たった一つのマスク顔」が雄弁に物語る。その例として、小池百合子東京都知事はどうでしょう? マスクのサイズについては首相の「小さすぎる」問題に対して、小池都知事は「大きすぎる」という指摘も。
「小さすぎても大きすぎても隙間はできてしまいます。そういった意味では安倍首相も小池都知事もマスクの目的をよく理解しているのか疑問です」(聖路加国際大学大学院准教授・大西一成氏『NEWSポストセブン』2020.4.15)
ただし、小池都知事の情報発信における戦略は安倍首相に比べると格段に周到のよう。最初は大きすぎたマスクがだんだんフィットするサイズへと変わってきている。実際、会見画像で確認すると、頬を覆う面積やあごの出方に変化が見られます。