「もうがまんの限界です。この不安な状況から守ってくれるはずの夫が、頼りないだけでなく、憎しみの対象になってしまっていて…」
そう絞り出して香織さん(40才・仮名)は目を伏せる。結婚生活8年目。子供はいないが夫婦仲はいたって良好。しかし、関係が激変したのは、東京都内で新型コロナウイルスによる感染が拡大してからだ。
「外出の自粛要請が出てから、私自身、買い物はまとめてするなど工夫しています。でも、夫は“仕事だから”と外出を続けている。在宅勤務になったはずなのに…明らかに不審な外出もありますが、問い詰める気にもなりません。実家に帰ろうとも思ったんですが、東京から実家へ戻れば両親の感染リスクを高めるし、周囲の目もある。家にいると夫を疑うばかりで…」
少し前まで仲がよかった夫婦だとは信じがたい家庭崩壊ぶりだが、「香織さんのケースは、決してレアケースではないんです」とは、『探偵の現場』(角川新書)などの著書がある調査会社大手のMR代表・岡田真弓さん。
「3月の浮気調査の相談件数は、昨年比で100件ほど増えています。4月も圧倒的に多い。それだけ夫婦関係に亀裂が入っているかたがたが多いということです。
どんなに環境が変わっても、不倫をする人の欲望は止められないですし、一緒に過ごす時間が増えるなかで結婚相手の違和感にも気づきやすい。結果として相談件数が激増しているのでしょう」
香織さんの場合、夫の在宅勤務がきっかけでイライラが募り始めた。
「いつも『仕事が忙しい』が口癖だったのに、在宅勤務中、仕事をしているそぶりがあまりないんです。それなのに掃除機の音がうるさいなど文句は言ってきて。しかも私が息抜きがてら、ソファでSNSを見ていると『そんなアカウント持ってるんだ』と夫が覗き込んできたんです。私にとってSNSは、家庭でも職場でもない第3の世界。その聖域に土足で踏み込まれたようでウンザリしてしまいました」
さらに、普段なら気にならない夫の家事の不参加にも、香織さんは腹が立つように。