世界中に拡大する“コロナショック”はあらゆる産業に甚大な経済的損失を与えているが、自動車業界もその最たる業種だ。世界規模で展開するサプライチェーン(部品供給網)が断絶する中、果たして自動車メーカーはどう立て直しを図るのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。
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100年に一度の変革の荒波にもまれる自動車業界にいきなり襲い掛かった、100年に一度のパンデミック“コロナショック”。現在進行形の事象なだけにトータルでどのくらいの影響があるかという全体像はまだ確定していないが、石油ショックやリーマン・ショックを超える戦後最大の試練になる公算大だ。
ひとたび感染者が出れば工場が停止し、サプライチェーンはズタズタになり、販売網も機能しなくなる。人間でいえば多臓器不全が起こるようなもので、どのメーカーも損害軽微でいられるわけがない。
新型コロナウイルスによる厄災が今後、どういう道をたどるかは分からない。免疫獲得者が増加し、ワクチンの開発が進めば、いずれは収束するものだが、それがいつになるかは未確定だ。が、企業にとって立ち止まることは、それすなわち死を意味する。すでにポストコロナの世界における新たな覇権争いが発生することを見据えた丁々発止の戦いが始まっている。
「われわれにとって新型コロナウイルスはとんでもない厄災になりました。モノづくりから働き方まで、いままで見えにくかった問題が一気に露見して、正直、首脳陣から現場まで衝撃を受けています。何しろ自動車ビジネスの上流から下流まですべてが同時に止まるというのは初体験ですから。
しかし、これは世界のどのメーカーも同じ。立ち直りの早さをめぐる戦いは必ず始まります。その戦いで優位に立つためには、パンデミックがいつ終わるか観察するような悠長な構えではダメということも、どのメーカーも分かっていることでしょう」
日系自動車メーカー幹部はこう語る。1~3月の世界販売は各市場とも散々。2月は単独国家としては世界最大である中国市場がコロナウイルスによる外出禁止令などの影響で、新車販売は実に前年比8割減となった。
3月に入ると今度はアメリカ市場、ヨーロッパ市場が大打撃を受けた。パンデミックの影響が比較的小さい日本は各月とも前年比マイナス1割と平穏であったが、大都市圏で緊急事態宣言がなされたこともあり、4月以降は相当の影響が出ると予想されている。
販売減による巨額の収入減は、一定台数以上を量産して初めて利益を取れる現代の自動車産業にとっては、耐え難いものだ。パンデミックが収束に向かうあかつきには、その損失を取り戻そうとするであろう。