ビジネス

ポストコロナの自動車業界 少ないパイ奪い合うデスマッチへ

部品供給網が世界中に広がっている自動車業界(EPA=時事通信フォト)

部品供給網が世界中に広がっている自動車業界(EPA=時事通信フォト)

 世界中に拡大する“コロナショック”はあらゆる産業に甚大な経済的損失を与えているが、自動車業界もその最たる業種だ。世界規模で展開するサプライチェーン(部品供給網)が断絶する中、果たして自動車メーカーはどう立て直しを図るのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。

 * * *
 100年に一度の変革の荒波にもまれる自動車業界にいきなり襲い掛かった、100年に一度のパンデミック“コロナショック”。現在進行形の事象なだけにトータルでどのくらいの影響があるかという全体像はまだ確定していないが、石油ショックやリーマン・ショックを超える戦後最大の試練になる公算大だ。

 ひとたび感染者が出れば工場が停止し、サプライチェーンはズタズタになり、販売網も機能しなくなる。人間でいえば多臓器不全が起こるようなもので、どのメーカーも損害軽微でいられるわけがない。

 新型コロナウイルスによる厄災が今後、どういう道をたどるかは分からない。免疫獲得者が増加し、ワクチンの開発が進めば、いずれは収束するものだが、それがいつになるかは未確定だ。が、企業にとって立ち止まることは、それすなわち死を意味する。すでにポストコロナの世界における新たな覇権争いが発生することを見据えた丁々発止の戦いが始まっている。

「われわれにとって新型コロナウイルスはとんでもない厄災になりました。モノづくりから働き方まで、いままで見えにくかった問題が一気に露見して、正直、首脳陣から現場まで衝撃を受けています。何しろ自動車ビジネスの上流から下流まですべてが同時に止まるというのは初体験ですから。

 しかし、これは世界のどのメーカーも同じ。立ち直りの早さをめぐる戦いは必ず始まります。その戦いで優位に立つためには、パンデミックがいつ終わるか観察するような悠長な構えではダメということも、どのメーカーも分かっていることでしょう」

 日系自動車メーカー幹部はこう語る。1~3月の世界販売は各市場とも散々。2月は単独国家としては世界最大である中国市場がコロナウイルスによる外出禁止令などの影響で、新車販売は実に前年比8割減となった。

 3月に入ると今度はアメリカ市場、ヨーロッパ市場が大打撃を受けた。パンデミックの影響が比較的小さい日本は各月とも前年比マイナス1割と平穏であったが、大都市圏で緊急事態宣言がなされたこともあり、4月以降は相当の影響が出ると予想されている。

 販売減による巨額の収入減は、一定台数以上を量産して初めて利益を取れる現代の自動車産業にとっては、耐え難いものだ。パンデミックが収束に向かうあかつきには、その損失を取り戻そうとするであろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
4月7日、天皇皇后両陛下は硫黄島へと出発された(撮影/JMPA)
雅子さま、大阪・沖縄・広島・長崎・モンゴルへのご公務で多忙な日々が続く 重大な懸念事項は、硫黄島訪問の強行日程の影響
女性セブン
戸田菜穂など、配役の妙が早くも朝ドラファンの注目を集めているという/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
『あんぱん』で朝ドラヒロイン経験者が共演…『ええにょぼ』戸田菜穂と『ひまわり』松嶋菜々子、“役どころ交換”の遊び心ある配役
週刊ポスト
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
SNSで出回る“セルフレジに硬貨を大量投入”動画(写真/イメージマート)
《コンビニ・イオン・スシローなどで撮影》セルフレジに“硬貨を大量投入”動画がSNSで出回る 悪ふざけなら「偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と弁護士が指摘 
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン