多くの人に愛されたバカ殿(写真/時事通信社)

『8時だョ!全員集合』の放送開始は1969年。1973年から同番組に出演し始めた志村さんは半世紀にわたって、日本のエンターテインメントのど真ん中に立ち続けたことになる。あるときは、はちゃめちゃな殿様に、またあるときは「だっふんだ」が口癖のおじさん、震える手に耳の遠い、眼鏡をかけたおばあちゃん。日本中の誰もが親しみを覚えたであろうキャラクターに変身し、世代を超えて人々を笑わせ続けた。

4月4日に放送された『天才!志村どうぶつ園 特別編』(日本テレビ系)が視聴率27.3%を獲得するなど、志村さんの追悼番組は軒並み高視聴率だった。これも志村さんが世代を超えた多くの人に愛された証である。

 だがこの現象を「テレビの終わりの始まり」と見る向きも少なくない。映画監督の園子温さんもその1人だ。

「テレビが生んだいわゆる昭和のスターは志村さんで終わりでしょう。昭和の頃は家族の団らんの象徴がテレビだったかもしれないけれど、いまの小学生や中学生はテレビタレントよりもユーチューバーが好きですし、スマホさえあれば見たいものが見られる。地上波テレビがなくなることはないと思うけれど地方のシャッター街のようなもので、廃れるばかりだと思います」(園さん)

 奇しくも志村さんが旅立つのと時を同じくして、それを裏付けるようなデータが発表された。電通が発表した2019年の広告収入の内訳で、インターネット広告費(2兆1048億円)がテレビメディア広告費(1兆8612億円)を上回ったのだ。

 長らく「娯楽の王様」とされたテレビがその座から引きずり下ろされた現実は、テレビ関係者にも衝撃を与えた。

「とうとう来たか…という感じです。広告費の逆転は数年前から囁かれてはいましたが、スポンサー企業がテレビよりネットの方が広告を出す価値があると考えた結果が数字として表れてしまったわけで、非常に危機感があります。テレビの大きな収入源である広告収入が減れば、業界は先細りするしかありません」(民放キー局プロデューサー)

 なぜ、テレビは王座を譲り渡すことになったのか。

「背景にあるのはコンテンツ力の低下です」

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