思い切り外出を楽しみたい季節になったが、今年は新型コロナウイルスの影響で難しい。老親がいる家族が気をつけたいのは感染リスクの回避とともに、活動量が減ることがもたらす影響だ。特に睡眠。不眠に悩みがちな高齢者にとっては大問題だ。厳しい状況下、寝具の見直しなど快眠のためにできることを紹介したい。埼玉県立大学准教授の有竹清夏さんに聞いた。
◆加齢で睡眠の形が変化。無用な不安を払拭して
高齢者に限らず、睡眠が生きるために欠かせないことは言うまでもない。
「睡眠の主な効用は、一日活動した心身の疲労を回復させること。その中には免疫力の増強作用もあります。新型コロナウイルスをはじめとするさまざまな病原体が体に入ってきたとき、直接攻撃したり効力を抑えたりする免疫物質は、睡眠中に多く分泌されるのです。そのため睡眠不足になれば免疫力が落ち、病気にかかりやすくなるといえます」(有竹さん・以下同)
“かぜをひいたらとにかく寝なさい”といわれるのも、免疫力を万全にして闘うため。ただ間違えてはいけないのは、長時間眠ればよいわけではないということだ。
「個人差はありますが、人が生理的に必要な睡眠時間は40代まででおよそ7時間、50代で6時間半、60代以降は6時間。年を重ねて活動量、代謝量が減る分、必要な睡眠時間も少なくなるのです。深い眠りが減って浅い眠りが増えるので、夜中に目が覚めやすくなる。また、生活のメリハリがなくなりがちで寝入りが悪いのも高齢のかたにはよくあることです」
これを“昔のように眠れない”とひどく思い悩み、睡眠薬に頼ったり、睡眠時間を確保しようと就寝時間を早めすぎて生活リズムを崩したり、別の問題が展開してしまうケースも少なくないという。
「日中、強い眠気やぼんやりし続けることがなく活動できるなら大丈夫。“高齢者の睡眠”を再認識し、心配しすぎない、なんとかしようと力まないという姿勢も大切です。ただし、高齢になると増える基礎疾患に伴う不眠、認知症やうつ病、睡眠時無呼吸症候群など、睡眠障害を伴う病気もあります。この場合は病気の治療が必要ですから、不眠だけを問題視せず、病気かどうかを見極めることも大切です」
◆重要なのは生活リズム。寝具の工夫で心地よさも