「一体、いつになったら受け取れるんだ!」──新型コロナの影響で売り上げや収入が減ってしまった企業・個人のために、緊急融資や特例貸付、助成金の拡充といった措置が講じられた。しかし、申し込みの多さと手続きの煩雑さに、現場は大混乱に陥っている。
全国の都道府県労働局の窓口には、業績が悪化して「雇用調整助成金」の支給を求める事業主が殺到している。
中小企業の多い大阪では、労働局の助成金センターの入り口に「完全予約制」の張り紙があるが、やってくる人たちに聞くと、「予約しようと電話しても全くつながらないから、直接来たんや」と揃って愚痴をこぼす。
繁華街に立地するビルで飲食店を営む40代の男性はため息をつく。
「今日は予約を設定して、申請書類を受け取るだけなのに、30分待ちでした。しかも、予約が取れた相談日は4月末。2週間も待たされるなんて……」
雇用調整助成金は、従業員を休ませる際、企業が払う休業手当の一部を国が助成するものだ。今回、政府は同制度を特例で拡充。中小企業の場合、助成率は最大9割となる。
ただ、手厚い助成がスムーズに行き渡っているとはいえない状況がある。
◆協力金はもらえない
前出の飲食店オーナーは困り果てている様子だ。
「うちは従業員が5人。店が入っているビル自体が閉まるので、5月6日までは店を開けられない。それなのに、今日の説明では書類を揃えて申請し、支給が認められても、入金は3~4か月先だという。それまで店が持つ保証なんてありませんよ」
同様の事態が各地で起きている。企業経営に詳しい人事ジャーナリスト・溝上憲文氏の解説。
「雇用調整助成金の審査に時間がかかる状況が全国的に広がっています。政府は申請書類の削減など手続きの簡素化を進め、『申請から支給まで1か月にする』といっていますが、なかなか実現は難しい。
特例措置が決まった2月にいち早く申請した企業はスムーズに支給が受けられたが、我慢して凌ごうとしていた企業がいよいよ苦しくなり、多くの業種から申請が殺到している」