日産自動車元会長、カルロス・ゴーン氏の肉声を10時間以上にわたって保釈中に聞き出していたのが元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏である。その記録が『「深層」カルロス・ゴーン氏との対話』(小学館刊)としてまとめられた。田原総一朗氏(ジャーナリスト)は2人の対話をどう読み取ったか。
* * *
僕はゴーン氏が逮捕された当初、これは“正義のクーデター”だと思いました。日産の大株主のルノーが、フランス政府の意向を受けて日産を統合したいと言ってきて、統合反対だったはずのゴーン氏はルノー会長の座を守るため統合賛成に転じてしまった。これを阻止するため日産は経産省と組んでゴーン氏の追い落としに動き、それに検察も乗った。それは、日本経済を守るための正義の行動であるという解釈でした。
しかし本書によれば、それは違うという。ゴーン氏はこう言っています。
〈フランス政府は統合させたかったが、日産というか日本側は全く受け付けない。私の立場としては統合したくない。でも、物事を進めなければならないので、次のステップとして私が考えたアイデアが、持ち株会社(HD)の設立だった〉
〈私はずっと統合には反対してきた。1999年以来ずっと統合はだめだと言ってきた。ところが、統合問題が私に対しての悪材料として用いられた〉
つまり、ゴーン氏は統合には反対だったのに、統合問題がクーデターに利用されたのだと。ゴーン氏はこのようにも言っています。