放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、昭和を明るく朗らかにした大衆芸術「サザエさん」と「エノケン」についてお送りする。
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生まれてから71年、こんなに暗い気分の世の中は初めてだ。“無くても無くてもいい商売”といわれる我々戯作師は、せめて皆様に明るい話題をと願って生きている。医学の事はよく分からないが、せめて心だけは健康になるようにと考える。
カメラをドーンとひいた画で見ると“日本の黄金期”はやっぱり「昭和」だったんだなと思う。たしかに途中つらい戦争もあったが、日本中が上を向いて歩いていた。
その昭和を最も明るく朗らかにしてくれた大衆芸術の両横綱といえば「サザエさん」と「エノケン」だろう。本屋をのぞくとやたらサザエさんを特集した雑誌が目につく。理解の早い私は「長谷川町子生誕百年」である事と「長谷川町子記念館」が「長谷川町子美術館」のむかいに、4月にオープンしたことを知る。残念だが今回のコロナの一件で公開は少しずれるようだが……原画も沢山見られるらしい。
新聞の漫画といえば朝日が「サザエさん」で、我が家は当時読売だったので「轟先生」、毎日が「フクちゃん」だった。「サザエさん」を描きながら週刊誌に「エプロンおばさん」。それが終わって始まった「いじわるばあさん」(1966年~1971年)が一番好きだった。1967年には青島幸男がTVで演じて大人気。
『サザエさん』のアニメが始まったのが1969年。日曜日の夕方といえば『笑点』のあのメロディと『サザエさん』のあの歌。日本で一番有名な歌かもしれない。