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帰省した若者が「地元に裏切られる」という緊急事態が続発

緊急事態宣言のあとでも、地方へ帰らざるをえない人もいる(時事通信フォト)

緊急事態宣言のあとでも、地方へ帰らざるをえない人もいる(時事通信フォト)

 新型コロナウイルスの感染について、地方では、都市部から移動してきた人が経路となった例がいくつも確認されていることもあり、必要があって移動してきた人を非難するような雰囲気ができあがりつつある。戦うべき相手はコロナウイルスであるはずなのに、感染の可能性があるだけの人を敵視したり差別する感情が育ちつつある。地元での居場所を奪われつつある人たちの嘆きを、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍首相は4月17日、これまで首都圏や大都市圏にのみ発令していた緊急事態宣言を、全国に拡大すると発表した。感染者が1万人を優に超え、感染による死者がクルーズ船ぶんを除いても250名を超過して動揺の声が国民から上がっている。

「正直、全然実感ないです。テレビも新聞も連日コロナコロナで、気が滅入りそう。特に影響がないのに、営業の自粛といった話も出てきている。補償などあるのか。都会の話、だと思っていたので驚いています」

 こう話すのは、感染者が3人(4月18日時点)の徳島県内で飲食店を経営する男性(52)。つい最近まで通常通りの生活を続け、コロナウイルスに関しては「どこか遠い土地の話」と眺めていたというが、感染者の少ない地方では、こうした感覚の人々はそう珍しくはない。その一方で、極端に過敏になっている人々がいるのもまた、感染者が少ない地方都市だ。

 長崎県出身で東京在住の大学生・森田駿一さん(仮名・20代)が肩を落とす。

「新学期もなくなりアルバイトもコロナの影響でなくなりました。実家に余裕がなく、奨学金とバイト代で学費と生活費を工面していたので本当に困りました。やる事もないので実家に帰ろうとしたところ、親から止められました」(森田さん)

 ちょうどその頃、森田さんの実家がある長崎県では、海外帰りの大学生の感染が発覚。まだ県内では二例目だった事もあり、森田さんが東京に出ていることを知っている実家の近所の住人が「森田さんも危ない」と親のところに飛んできたのだという。

「まさか実家に帰ってくれるな、なんて言われるとは夢にも思わなかったし、近所の人たちが監視している事も悲しかった。学校も仕事もなく、そして外出もできずに東京とかのアパートで引きこもるのみ。感染した方々も辛いと思いますが、僕もきついです」(森田さん)

 実は森田さんと同郷出身で、海外に留学していたという知人は、すでに帰省していた。だが、先の大学生感染者の存在が発覚すると、地元の話題が扱われるネット掲示板に、ほぼ名指しで個人を糾弾するような書き込みもなされた。それを知り、少なくともコロナが収束するまでは地元へ帰れないと諦めた。

「中世の魔女狩りのようなものです。地元を捨てて都会にいったくせに、といった全然見当はずれの悪口も書かれる。こっちこそ、地元に裏切られた気持ちです」(森田さん)

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