一向に収束の気配を見せない新型コロナウイルスの蔓延によって、崩壊しかかっている医療現場。増え続ける感染者の受け入れ病院が足らず、民間施設やホテルなどが使われているのは周知の事実だが、そんな中、公立病院の“再編・統合話”が着々と進んでいるという。一体なぜなのか。ジャーナリストの山田稔氏がレポートする。
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収束が見えないコロナ感染激増で、医療崩壊寸前の状況になっている。感染者を受け入れる病床の絶対数が足りない。この先、イタリアのようになったらトリアージ(治療の優先度選別)が日常になってしまう。
そこで東京都などは病床不足解消のため、無症状者や軽症者を借り切ったホテルへ移送する対応を取り始めた。大阪市では松井一郎市長が市立十三市民病院を「コロナ専用病院」とする方向で病院側と調整を始めた。激増する感染者を前に病床確保に向けた動きが続いている。
それでも現状は厳しい。NHKの報道によると、4月20日時点で6都府県で、確保した病床数に対してコロナ入院患者が8割を超えているという。かなり逼迫している状況だ。
そんな医療崩壊危機状況の中、国会で驚くべき厚労相答弁が出た。
舞台は4月10日の衆院厚労委員会。厚労省は、今年1月に厚労省がまとめ直した「公立・公的病院再編・統合リスト」の440病院のうち、53病院が感染症指定医療機関(昨年4月1日現在)に含まれていることを明らかにした。首都圏も例外ではない。再編が必要とされている病院でも、現実にはコロナ対応が行われているとみられる。
再編・統合の対象は地方の病院が多いが、人口が多い首都圏でも千葉市立青葉(第二種感染症指定医療機関)、横須賀市立市民病院(同)、独立行政法人国立病院機構 神奈川病院(同)などが含まれている。こうした状況を前に、加藤勝信厚労大臣は今後も病院再編を従来通り続けていく考えを示した。以下は同委員会でのやり取りだ。
「感染症対策という重大な視点が抜けている。やみくもに改革を進めず、見直すべきだ」(立民・阿部知子議員)
「それぞれの地域でしっかり議論してもらい、これからの時代にふさわしい地域医療をつくっていく努力に何ら変わりはない」(加藤厚労相)
コロナ禍が一段落したら、病院再編は待ったなしとなってしまうのか──。