国内

コロナで医療崩壊寸前でも病院の再編・統合が進む「不可解」

6都府県でコロナ患者が確保した病床数の8割に迫っている(写真はイメージ)

6都府県でコロナ患者が確保した病床数の8割に迫っている(写真はイメージ)

 一向に収束の気配を見せない新型コロナウイルスの蔓延によって、崩壊しかかっている医療現場。増え続ける感染者の受け入れ病院が足らず、民間施設やホテルなどが使われているのは周知の事実だが、そんな中、公立病院の“再編・統合話”が着々と進んでいるという。一体なぜなのか。ジャーナリストの山田稔氏がレポートする。

 * * *
 収束が見えないコロナ感染激増で、医療崩壊寸前の状況になっている。感染者を受け入れる病床の絶対数が足りない。この先、イタリアのようになったらトリアージ(治療の優先度選別)が日常になってしまう。

 そこで東京都などは病床不足解消のため、無症状者や軽症者を借り切ったホテルへ移送する対応を取り始めた。大阪市では松井一郎市長が市立十三市民病院を「コロナ専用病院」とする方向で病院側と調整を始めた。激増する感染者を前に病床確保に向けた動きが続いている。

 それでも現状は厳しい。NHKの報道によると、4月20日時点で6都府県で、確保した病床数に対してコロナ入院患者が8割を超えているという。かなり逼迫している状況だ。

 そんな医療崩壊危機状況の中、国会で驚くべき厚労相答弁が出た。

 舞台は4月10日の衆院厚労委員会。厚労省は、今年1月に厚労省がまとめ直した「公立・公的病院再編・統合リスト」の440病院のうち、53病院が感染症指定医療機関(昨年4月1日現在)に含まれていることを明らかにした。首都圏も例外ではない。再編が必要とされている病院でも、現実にはコロナ対応が行われているとみられる。

 再編・統合の対象は地方の病院が多いが、人口が多い首都圏でも千葉市立青葉(第二種感染症指定医療機関)、横須賀市立市民病院(同)、独立行政法人国立病院機構 神奈川病院(同)などが含まれている。こうした状況を前に、加藤勝信厚労大臣は今後も病院再編を従来通り続けていく考えを示した。以下は同委員会でのやり取りだ。

「感染症対策という重大な視点が抜けている。やみくもに改革を進めず、見直すべきだ」(立民・阿部知子議員)

「それぞれの地域でしっかり議論してもらい、これからの時代にふさわしい地域医療をつくっていく努力に何ら変わりはない」(加藤厚労相)

 コロナ禍が一段落したら、病院再編は待ったなしとなってしまうのか──。

関連キーワード

関連記事

トピックス

新政治団体「12平和党」設立。2月12日、記者会見するデヴィ夫人ら(時事通信フォト)
《デヴィ夫人が禁止を訴える犬食》保護団体代表がかつて遭遇した驚くべき体験 譲渡会に現れ犬を2頭欲しいと言った男に激怒「幸せになるんだよと送り出したのに冗談じゃない」
NEWSポストセブン
警視庁が押収した車両=9日、東京都江東区(時事通信フォト)
《”アルヴェル”が人気》盗難車のナンバープレート付け替えで整備会社の社長逮捕 違法な「ニコイチ」高級改造車を買い求める人たちの事情
NEWSポストセブン
地元の知人にもたびたび“金銭面の余裕ぶり”をみせていたという中居正広(52)
「もう人目につく仕事は無理じゃないか」中居正広氏の実兄が明かした「性暴力認定」後の生き方「これもある意味、タイミングだったんじゃないかな」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
《英国史上最悪のレイプ犯の衝撃》中国人留学生容疑者の素顔と卑劣な犯行手口「アプリで自室に呼び危険な薬を酒に混ぜ…」「“性犯罪 の記念品”を所持」 
NEWSポストセブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《離婚後も“石橋姓”名乗る鈴木保奈美の沈黙》セクハラ騒動の石橋貴明と“スープも冷めない距離”で生活する元夫婦の関係「何とかなるさっていう人でいたい」
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン
4月7日、天皇皇后両陛下は硫黄島へと出発された(撮影/JMPA)
雅子さま、大阪・沖縄・広島・長崎・モンゴルへのご公務で多忙な日々が続く 重大な懸念事項は、硫黄島訪問の強行日程の影響
女性セブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン