銚子電気鉄道株式会社、通称「銚子電鉄」といえば、超ローカル線でありながら、度重なる経営危機を、運賃外収入を得ることで乗り越えてきたことで知られている。法律で定められた車両点検費用を賄うための費用として、ぬれ煎餅を買おうという呼びかけがネットに広がったことを記憶している人も多いだろう。そして、新型コロナウイルスの感染拡大による影響は、もちろん銚子電鉄も直撃している。ライターの小川裕夫氏が、新商品「お先真っ暗セット」を抗コロナウイルスとする攻めの営業についてレポートする。
* * *
新型コロナウイルスの猛威が止まらない。
感染拡大に歯止めをかけるべく、4月7日には安倍晋三首相が記者会見を開き、緊急事態を宣言。同宣言により、東京都・大阪府を含む7都府県が対象地域に指定された。
それでも、日を追うごとに1日の新規感染者数は右肩上がりを続け、新型コロナウイルス禍は国民を恐怖に陥れている。事態を重く見た政府は、4月17日に緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大した。
密閉、密集、密接の「3密」を避けるように呼びかけられ、急速に在宅ワークへの切り替えが行われているため、通勤する人が減少している。しかし利用者が減少しても電車の運転本数を減便したら、電車の混雑は解消しない。満員電車は感染拡大の原因でもある。そうした事情から、首都圏の鉄道各社は利用者が少ないのに減便できなかった。
一方、通勤ラッシュが生じない地方の鉄道会社は、外出自粛を受けて減便を決行した。運転本数を削減することで経費削減に努めている。しかし、運行本数を減らしたからといって、削減できる金額は小さい。車両・駅などの維持管理費を大幅に削減できるわけではないからだ。
そうした事情から、地方の鉄道会社は生き残りに必死だ。
地方の鉄道が苦境に陥っている中、銚子電気鉄道が孤軍奮闘している。千葉県銚子市に約6.4キロメートルの路線を有する銚子電鉄は、これまでにも何度も経営危機に瀕してきた。廃線やむなしの声が出るたび、銚子電鉄は卓抜なアイデアで危機を乗り越えてきた。
千葉県の片隅で走る銚子電鉄が全国に名前を知られるようになったきっかけは、2006年に車両の点検費用を捻出できない事態に直面したときだった。
鉄道会社が所有・運行する車両は、定期的に保守・点検することが法的に定められている。これは、乗客の安全を確保するうえで当然といえるが、そうした保守・点検作業には莫大なメンテナンス代が必要になる。
銚子電鉄は、これらの費用が不足した。その際、ブログに「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」と記述。その電車修理代を確保するために、銚子電鉄が副収入を得るために製造・販売している“ぬれ煎餅”の購入を呼びかけた。