にわかに朝鮮半島に不穏な空気が漂い始めた。金正恩重篤情報──いま北に不測の事態が起きれば、米中韓を巻き込む外交的混乱は避けられない。この重大局面の“真のキーマン”とは──。
正恩氏の身に“万が一”が生じた時、後継者や政治体制はどうなるのか。ジャーナリスト・五味洋治氏はこう見る。
「後継者の最有力候補は妹の金与正です。今年に入って、金正恩が“軍事以外の外交や内政は与正に任せる”と発言し、実質的な後継者指名をしたとの噂がまことしやかに流れています。
問題は、実際に与正が後継者となった時、軍の支持を得られるかどうか。経済制裁により中朝貿易が7割減となるなど、経済は相当に疲弊している。軍や民衆がもう我慢ならんと反旗を翻す可能性があります」
そうなれば国内に大混乱が生じ、無政府状態に陥るのは必至だ。そこで事態収拾のキーマンとして登場する可能性が囁かれるのが、故・金正日総書記の孫であり、2017年にマレーシアの空港ロビーで殺害された金正男氏の長男・金ハンソル氏である。
ハンソル氏は父が殺害された直後、YouTubeを通じて「私の名前は金ハンソル、北朝鮮の金一族の一員だ」と呼びかけたことで注目を集めた。当時住んでいたマカオからの脱出を助けたのは、北朝鮮反体制派の「自由朝鮮」メンバーとされる。同団体は昨年2月、スペインの北朝鮮大使館襲撃事件を起こしたことでも知られる。
ハンソル氏の父・正男氏を独占取材し、著書『父・金正日と私』にまとめた五味氏が言う。