自粛を余儀なくされる毎日にあって、最大の気分転換は「食」ではないだろうか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が来るべき食のトレンドについて解説する。
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このところの台湾の充実ぶりは、目を見張るばかりだ。決断力あるトップと「天才」と称される若手閣僚が存分に力をふるい、社会システムを構築。世界が対応に苦慮する全容の見えない敵を見事に封じ込め、4月に入ってから、新規感染者がゼロの日もある。
最近、台湾では新規感染者がゼロになると、コンビニのコーヒーやドリンクチェーンなどで「ゼロ人記念2杯目無料」キャンペーンが行われるという。実に羨ましい(なにが羨ましいかはさておき)。そして人のいない東京の街をぐるりと見回すと、台湾のドリンクチェーンがずいぶん増えたことに気づく。
昨年のタピオカの爆発的なブームは、まぎれもない社会現象だったし、小籠包や魯肉飯(ルーローファン)は日本の居酒屋メニューにも盛り込まれるようになった。すっかり生活に浸透した台湾グルメは、もはや日本人にとって平和な日常の風景だ。
とりわけいま求められているのは、やたらに景気のいいバブルっぽい店ではなく、人の日常生活のなかにあるちょっとしたハレの食。台湾グルメはそうした町の空気にもピタリと合う。では、ポストタピオカとも言うべき、次に来る台湾グルメはなんだろうか。
ポストタピオカとなると、まず候補になるのはドリンクとスイーツだ。台湾のドリンクはタピオカの大ブレイクで一気に認知度が高まったが「ドリンクパラダイス」とも言われる台湾には他にもさまざまな飲み物がある。代表的なドリンクが、最近「台湾フルーツティ」として知られつつある「水果茶」だ。紅茶や緑茶、台湾茶などに、オレンジやマンゴーなどの果汁やジャム、果肉を入れたドリンクで、台湾でも人気が高い。
「台湾現地メディアでも”本格派”と取り上げられている『HOPE CHA』監修の水果茶など、今年何店かの水果茶が日本にも上陸すると聞いています。現地そのままの味だと日本人には少し甘く感じられるかもしれないので、日本人向けの飲み飽きしない味わいにチューニングしてくるんじゃないでしょうか」(日本人向け台湾コーディネーターのAnnaさん)
店によって使うお茶や果物のブレンドは異なり、それが店ごとの個性にもつながっているという。共通するのは、フルーツの甘味が口当たり良く、酸味が爽やかなのど越しを演出し、茶の渋みで後口もすっきり味というあたり。
スイーツでいえば、豆乳を固めて作る甘味の「豆花」がじわじわ人気になりつつある。豆乳に凝固剤を入れるという、豆腐のような作り方だが、凝固剤はにがりではなく、タピオカと同じキャッサバの粉と食用の石膏(!)。シロップで味をつけ、甘く煮た豆や芋団子のなどのトッピングを乗せる。みつ豆やあんみつにも似た素材の構成で、若者には新しいものとして捉えられ、ベテラン層はノスタルジーを感じそうなアイテムだ。