新型コロナウィルスの感染が拡大している。それを防ぐために発令された緊急事態宣言は全国に及び、多くの大学が学内に立ち入ることを禁じている。
こうした事態は大学入試にも大きな影響を与えそうだ。昨今の受験生は、将来の就職を考えながら大学・学部を選ぶことが当たり前になっている。コロナの感染拡大により、世界的に経済活動に陰りが見られる中、就活戦線の動向が「志望校選び」にも多大な影響を与えるだろう。
ここ数年、売り手市場といわれるほど好調だった企業の採用は、間違いなく減少に転じると見られている。なかでも事務系の採用が減るだろう。
過去のバブル経済の崩壊、リーマン・ショックが起きた後も同じだった。この時には文系学部の人気が下がり、理系学部の人気が上がる“理高文低”の学部志望動向になった。理系の中でも人気になるのが国家資格と結びついた学部だ。
優秀な受験生には医学部人気が高まっていく可能性はある。今の高校生は「困っている人を助けたい」気持ちが強く、さらに未知なるウィルスとの闘いで医療従事者の役割がますます高まっていることもあって、来年は医学部を志す人が多くなるかもしれない。
ただ、今回の場合、単純にそうなるかは疑問だ。コロナの猛威により、医療機関における院内感染が多数報告される中、二の足を踏む受験生も出てくるのではないだろうか。
近年、受験生の「医学部離れ」が進んでいるが、これが加速する可能性はある。いま医学部よりも人気になっているのが情報系だ。今年もコロナ禍で在宅勤務が進み、そのためのインフラ整備に注目が集まっている。このような事態になると、ますます企業のIT化は急務となり、来年入試でも情報系人気が高まる可能性は高い。
また、コロナ不況の深刻化によって、経済的な理由から医学部受験を諦める受験生が増えることも考えられる。
なにしろ、私立大医学部の平均学費は初年度納入金が約730万円、国立大の約82万円の9倍にもなる。6年間だと私立大が約3200万円、国立大が350万円だ。私立大はこれでも安くなったが、仮に浪人して医学部を目指すにしても、私立より国立大へとなる可能性が大だ。