ライフ

「最新がん治療」にはフェイク情報も 宣伝文句の見分け方は

患者も賢くなるべき(写真はイメージ)

「15分おきに水を飲むと、新型コロナを予防できる」「マスクには意味がない」「若い世代は重篤化しない」──そのような、新型コロナに関する“根拠なき情報”が問題になった。人々が翻弄されるのは、こうした情報の発信元が「医者」であることが少なくないだからだ。実は、「がん治療」においても、同様のことが起きている。「がん」は年間約38万人が亡くなっている疾患だけに、多くの患者やその家族が手を尽くして治療法を探そうとするが、その気持ちが利用されてしまうケースが少なくない。「フェイク情報」によってエビデンス(科学的根拠)に基づかない高額な自由診療へと誘導されてしまうのだ。どのように情報を見分ければいいのか。『やってはいけない がん治療』を上梓したジャーナリスト・岩澤倫彦氏がレポートする。

 * * *
 がん治療の説明を医者から受ける時、「標準治療」という用語が必ず出てきます。「標準治療」とは、手術、放射線、化学療法(抗がん剤など)を使用する現時点で最も有効性が高い治療法のことです。日本では、保険診療で行うがん治療が「標準治療」なので、厳密な臨床試験で科学的に証明されていることが必須条件です。

 一般の人は、「標準治療」と聞くと、「普通の平均的な治療」というイメージを持ちがちです。そして、もっとよい治療を受けたいと考え、「最新のがん治療」と宣伝している自由診療クリニックに切り替えてしまうことが実際に起きています。

 実は、自由診療で行われている一部の治療は勝手に「最新」と名付けているだけで、有効性が証明されていない「博奕のような治療」でしかありません。
 
 そのひとつが「免疫細胞療法」です。患者の血液から採取した免疫細胞を、独自の方法で培養、活性化させるなどしてから体内に戻すというもの。この治療法は、全国の大学病院などで臨床試験が行われましたが、どれも患者に効くという証拠が出ませんでした。
 
 こうしたがん免疫細胞療法については、公益社団法人日本臨床腫瘍学会も、19年5月に公表した文書で次のように注意喚起を行っています。

〈効果や安全性が証明されず保険でも承認されていない免疫細胞療法やがんワクチン療法が、一部のクリニックなどで高額な値段で患者さんに投与されている事例を多く見かけます〉

〈効果や安全性が証明されておらず、承認されていない治療法は、本来であれば、臨床試験として行われるべきであり、実地医療として行われるべきものではありません〉

 ただ、自由診療クリニックのウェブサイトなどでは、不適切な方法で、「効く証拠」があるかのように見せかけているケースがあるので、注意が必要です。

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻雀好きな一面もあった大山のぶ代さん
「追っかけリーチでハネ満」「関取から清一色をロン」大山のぶ代さん、週刊ポストの「有名人麻雀大会」で見せていた“勝負師の顔”
週刊ポスト
10月17日、東京・世田谷区の自宅で亡くなった西田敏行さん(時事通信フォト)
《俳優・西田敏行さん逝去》訃報を受けて一番に供花を届けた「共演女優」 近隣住民が見ていた生前の様子
NEWSポストセブン
現地時間の16日、ホテルから転落し亡くなったとみられている「ワンダイレクション」元メンバーのリアム・ペイン(31)。通報を受けて警察が駆けつけた際には、すでに蘇生の余地もない状態だったという(本人SNSより)
《目撃証言》「ワン・ダイレクション」ペインさんが急逝…「元婚約者」とトラブル抱え、目撃された”奇行”と部屋に残されていた”白い粉”
NEWSポストセブン
ワールドシリーズMVPも視野に
《世界一に突き進む大谷翔平》ワールドシリーズMVPに向けて揃う好条件「対戦相手に天敵タイプの投手がいない」、最大のライバルは“ドジャースの選手”か
週刊ポスト
「応援していただいている方が増えていることは感じています」
【支持者が拡大中!?】斎藤元彦・前兵庫県知事インタビュー「街頭で、若者からの支持を実感しています」
NEWSポストセブン
コンビ名はどうするのか(時事通信フォト)
「変えなくていいのか?」ジャングルポケット・斉藤慎二 残された2人を悩ます「コンビ名問題」
週刊ポスト
芸歴66年を迎えた石坂浩二
【石坂浩二ロングインタビュー】27才での大河ドラマ主演を振り返る「特別な苦労は感じなかった。楽しい思い出ばかりでした」
女性セブン
合法的な“落選運動”のやり方(イメージ。時事通信フォト)
【“裏金議員”の落とし方】公選法の対象外となる合法的な“落選運動”の注意点 「組織でやるのはNG」「根拠となる事実を提示」
週刊ポスト
10月17日、東京・世田谷区の自宅で亡くなった西田敏行さん
《逝去》西田敏行さん、杖と車椅子なしでは外出できなかった晩年 劇場版『ドクターX』現場が見せていた“最大限の配慮”
NEWSポストセブン
グラビアアイドルとしてデビューした瀬戸環奈さん(撮影/カノウリョウマ)
【SNSで話題の爆美女】1000年に一人の逸材・瀬戸環奈が明かす「グラビア挑戦を後押しした“友人の言葉”」
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第16回】79歳の父親から「好きな人ができた」と突然の告白 相手のことが気になる…どうすべき?
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 「石破茂は保守かエセか」大論争ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「石破茂は保守かエセか」大論争ほか
NEWSポストセブン