新型コロナウイルスの収束が一向に見通せないなか、テレビ番組は試行錯誤をしながら番組作りを行っている。注目を集める番組のひとつがお昼の情報番組『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)だ。同番組が新たに行っている企画には、かつてお昼に放送されていたあの国民的番組を思わせるものが…。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
* * *
緊急事態宣言の発令から3週間あまりが過ぎて、テレビ番組にさまざまな変化が見られるようになりました。ソーシャル・ディスタンスを空けた立ち位置、レギュラー出演者のリモート出演、在宅に特化したコーナーあたりは、もはや当たり前。さらに、特番の収録ができなくなって、同じ出演者でまったくの別番組に切り換えた『出川・IKKO・みやぞんの割り込んでいいですか?』(テレビ東京系)が放送されるなど、さまざまな動きが見えはじめています。
なかでも、この一週間で目を引いたのは、月~金曜のお昼に放送されている『ヒルナンデス!』の変化。同番組はMCの南原清隆さんを中心に各曜日のレギュラー出演者が衣食住中心の情報を届けるバラエティなのですが、ここに来て異なるムードを見せているのです。
同番組の大半はロケVTRで構成されていますが、新型コロナウイルスの影響で新たな撮影ができなくなってしまいました。そこで番組は、「曜日対抗!超限定マーケティング!」というグループゲームを行ったり、「植松晃士のリモートファッションチェック」という視聴者参加型の企画をはじめたり、生放送バラエティらしい臨場感のあるコーナーを前面に押し出しているのです。
笑いあふれるその様子は、1982年10月から2014年3月まで31年半にわたって放送された国民的昼番組『笑っていいとも!』(フジテレビ系)を彷彿。さっそくネット上には「もっとこういうコーナーが見たい」という声が挙がりはじめています。現在の『ヒルナンデス!』はどこが『笑っていいとも!』に似ていて、何が支持されつつあるのでしょうか。
◆めったに見れない生放送のゲームコーナー
もともと「超限定マーケティング」は、ゲームの内容以上に、2011年4月の番組スタートから昨年9月まで金曜レギュラーを務めた有吉弘行さんの進行が評判のコーナーでした。しかし、有吉さんの降板後もコーナーは続行。ほぼ唯一のゲームコーナーである上に、往年の名番組『クイズ100人に聞きました』(TBS系)を思わせる“アンケートクイズ”という普遍的な面白さから、好意的に受け止められているようなのです。
さらに、今年3月9日から13日には、特別企画として曜日対抗戦を実施。これが現在の曜日対抗戦につながったことになりますが、今回は“1問10分×2本”のロングコーナーであり、コロナ禍でロケ休止に追い込まれたことが影響しているのは間違いないでしょう。
「MCとレギュラー出演者たちが生放送でゲームに挑む」という形式のコーナーは、『笑っていいとも!』終了後、ほとんど見られなくなりました。生放送ならではの熱気からドキドキ、グダグダまでの臨場感を味わえるグループゲームのコーナーは貴重であり、かつて「『笑っていいとも!』最大の魅力」とも言われただけに、『ヒルナンデス!』の「超限定マーケティング」に注目が集まりはじめたのは当然かもしれません。曜日対抗戦が『笑っていいとも!』の定番企画だったことも含めて、懐かしい感覚を楽しんでいる人もいるでしょう。
また、「植松晃士のリモートファッションチェック」が『笑っていいとも!』を彷彿させるのは、一般人参加型のコーナーだから。植松さんがテレビ電話で一般人のファッションチェックをしていく形のコーナーですが、『笑っていいとも!』も一般人参加のコーナーを量産して番組を盛り上げていました。現在はファッションのビフォーアフターを見せるために事前収録をベースにしていますが、ロケが行えない状況が続けば生放送のバージョンも見られるかもしれません。
◆裏番組は中高年向けの報道系ばかり