ライフ

【著者に訊け】薬丸岳氏 轢き逃げの加害者を描く『告解』

薬丸岳氏が満を持して放つ『告解』を語る

【著者に訊け】薬丸岳氏/『告解』/講談社/1650円+税

 冒頭に〈父に、母に〉と献辞のある薬丸岳氏の新作『告解』は、「私にしては珍しく、ラストに至るまでほぼ一晩で一気に物語の骨格ができた作品」だとか。

「実は昨年、父を亡くしました。その父親と同年代の老人が、過失とはいえ人の命を奪ってしまった若者に何を伝えようとしたのかという、最後のシーンがしっかり目に浮かんだんです」

 発端は平成21年11月21日深夜。高熱を出した夫のために雨の中、近所まで氷を買いに出た埼玉県上尾在住の主婦〈法輪君子〉81歳が車に轢かれ、200メートル近く引きずられて死亡した。悪質なひき逃げ事件だった。

 やがて犯人は、バイト帰りに酒を飲み、帰宅後に父親の車で再び外出した〈籬翔太〉20歳と判明する。だが、名門・京北大に通う彼は轢いたのを〈人だとは思わなかった〉と弁明。結局執行猶予は認められず、実刑4年10か月が確定するが、世間は翔太の父親が人気教育評論家〈籬敬之〉とあって一家を徹底的に糾弾した。

 自分にすら言い訳を重ね、逃げてばかりの翔太を主人公に、著者初の加害者視点に挑んだ本書では、法による罰や報いを超えた真の贖罪の形をも問う。

 少年法の限界と問題点を問い、大きな話題を呼んだ乱歩賞受賞作『天使のナイフ』から15年。「罪と人」を巡る、重く過酷な現実からも目を背けない真摯な姿勢は、読者からの信頼も厚い。

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
X子さんフジ退社後に「ひと段落ついた感じかな」…調査報告書から見えた中居正広氏の態度《見舞金の贈与税を心配、メッセージを「見たら削除して」と要請》
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレが関東で初めてファンミーティングを開催(Instagramより)
《新メンバーの名前なし》ロコ・ソラーレ4人、初の関東ファンミーティング開催に自身も参加する代表理事・本橋麻里の「思惑」 チケットは5分で完売
NEWSポストセブン
中居氏による性暴力でフジテレビの企業体質も問われることになった(右・時事通信)
《先輩女性アナ・F氏に同情の声》「名誉回復してあげないと可哀想ではない?」アナウンス室部長として奔走 “一管理職の職責を超える\"心労も
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
【女占い師が逮捕】どうやって信者を支配したのか、明らかになった手口 信者のLINEに起きた異変「いつからか本人とは思えない文面になっていた」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン