コロナ禍で職を失う人・収入が激減する人が多い中、これまで副業を禁止することが多かった日本企業も考えをあらためるところが増えているという。そもそも副業は欧米を中心に世界の常識であったのに対し、日本では最近になってやっと可否が論じられるようになった。この国難をきっかけにその流れが加速することも考えられるが、複数の職業・収入源を持つ人=ポートフォリオワーカーに関する新刊『ポートフォリオワーカー 「副業より複業」で幸せなお金持ちになる方法』(小学館)の著者マダム・ホーさんに話を聞いた。
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私は大阪出身の日本人です。単身アメリカに渡って医療関係の仕事につきましたが、父が倒れて介護貧乏に転落し、その経験から「何が起きても収入に不安を抱く必要のない働き方」について考えるようになりました。
結果、現在私は25種類の仕事(収入源)を持っています。便宜上、誰かに聞かれると「本業は国際会議などでの同時通訳」と答えますが、通訳も25の仕事のうちのひとつにすぎません。
アメリカでは複数の仕事を持つのは珍しいことではありません。日本のように、ひとつの会社に属していれば生涯安心という感覚を持つ人はほとんどおらず、自分のやりたいことを求めて次々に転職するのも普通です。そうした暮らしの中ではどうしても収入が減ってしまう、あるいは失ってしまうリスクに備える必要がありますから、皆、複数の仕事・収入源を持とうと考えます。その中には投資も含まれ、自分が働かなくても勝手にお金が働いてくれる=「不労収入」を得ることに熱心な人が多いのも日本との違いかもしれません。
こうした、複数の仕事・収入源を持つ人のことを「ポートフォリオワーカー」と呼びます。もともと「ポートフォリオ」は書類ケースのことですが、金融の世界では「金融資産の分散投資」を指し、そこから派生して「複数の仕事を同時並行してかけもつ人」のことをポートフォリオワーカーと呼ぶようになったと言われています。
私が新刊『ポートフォリオワーカー 「副業より複業」で幸せなお金持ちになる方法』の原稿を書いていたころ(昨年)、「働き方改革」の影響もあってか、日本でもようやく副業の可否が論じられるようになってきました。人生いつ何が起きるかわかりませんから、何かが起きたそのときに途方にくれるようなことがないように、「副業」どころではなく「複業」を考えましょう、というメッセージでもあったのですが、まさにそんな事態が起きてしまいました。そのころは想像もしませんでしたが、収入源を失って大変な不安の中にいる方も多いと思います。
このコロナ禍後の世界は働き方も以前と変わっていくはずですし、「何かが起きたときにも対応できる働き方」を考える人が増えるでしょう。それがまさに「ポートフォリオワーカー」としての生き方です。
ポートフォリオワーカーになるには準備も必要です。自分に何ができるのか、自分の強みは何か、そして本当にやりたいことは何なのか−−これらのことを自分と向き合ってクリアにするのが最初のステップ。次に、限られた時間を何にどう割いていくのか、時間に対する観念をあらためる必要があります。このプロセスを進めるためのワークも本書で紹介していますので、ご興味のあるかたは参考にしていただけたらと思います。