「悪名は無名に勝る」とは、世に知られていない状態よりも悪名高いほうが有利である、という意味だが、いまで言えば炎上でもPVやRTが稼げた方が有利だとでもいえば分かりやすいだろうか。芸歴30年のベテランコンビTKO・木下隆行が所属していた松竹芸能を退所、4月からYouTuber活動を始めた。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、謝罪がメインコンテンツとなっているYouTuber木下について考えた。
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謝罪がネタになっている──。
お笑いコンビTKOの木下隆行のYouTubeチャンネル『木下プロダクション』の動画を観て、こんなことを考えてしまった。公開されている動画の約半数が謝罪に関する内容である。新しい門出を迎えた木下は低頭平身のYouTuberロードを歩んでいる。
ことの発端は、木下がYouTuberデビューした4月1日の動画である。ここで木下は3分間にわたり、騒動について陳謝、所属事務所からの独立、お笑いへの渇望、相方への想いを述べた。
奇しくも語られていることは、今年1月にYouTuberデビューを果たし、木下同様に1本目に謝罪動画を公開した宮迫博之の動画とほぼ同じ。木下は宮迫を参考に動画を制作したのだろう。似た動画には似た評価が下されるもので、ともに「好評価」よりも「低評価」が集まっている。ただし、数が違う。宮迫の「低評価」は19万、木下の「低評価」は30万超である。人気と知名度、再生回数、起こした事件の大きさにしても宮迫が上回っている。普通に考えれば、宮迫の方に多くの批判も集まるはず。しかし、木下にはその理屈が通用しない。よくここまで嫌われた!と感心してしまうほどにどんなYouTuberよりも「低評価」を集めている。良くも悪くも謝罪動画は、木下の芸能人生において最も大きな話題を集める成果物となった。
宮迫の謝罪動画を参考にした木下だが、YouTuberデビューの方法も模している。宮迫が人気YouTuberヒカルを後見人にしたように、木下はカジサックを後ろ盾にしている。木下はカジサックの動画で、自身が松竹芸能という事務所を抜けることになったトラブルについて語っていた。
木下の主張を要約すると、後輩に対しての2回のパワハラが事務所退所の原因(1回目は投げたペットボトルがたまたま後輩の目を直撃。2回目は芸人独自の楽屋遊びの中で発生)。すでに2人の被害者とは和解済みであり、今のようなジリ貧の状況に追い込まれた原因はあることないことを書き連ねたメディアにあると続く。
最初に動画を見た際、印象に残るのは根拠が薄い風評被害によって追い詰められた芸人の悲しみだろう。ただし、2度目となると不思議と印象が変わるもので……。悲しみよりも自身のパワハラ騒動をメディアに責任転換する木下の”いやらしさ”が妙に目立つ。動画での謝罪もなんだか空虚に見えてくる。
自称「悲劇の芸人」木下はこのようにYouTuberデビュー以降、数々のヘイトを集め続けている。そして、今ではみずから“ミスター低評価”と自称するようにもなった。