長引く新型コロナウイルスとの戦いは、医療だけでなく、地域経済や各家庭の生活環境に深刻なダメージを及ぼしている。飲食店や娯楽施設の営業自粛で生活の楽しみを奪われたうえ、慣れない在宅勤務や外出自粛が続いてストレスがたまっている人も多いはずだ。そうしたなか、自宅にいながら誰でも簡単にできるストレス対処策として「呼吸法」に注目が集まっている。ストレス心理学の専門家が考案し、日常生活でストレスがかかる具体的な場面ごとに実践できる呼吸法をまとめた電子版書籍『たった1分で心が軽くなるポジティブ呼吸法』から一部抜粋して紹介する。(構成/池田道大)
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「ストレス」をそのままにしておくと、心の痛みはどんどん大きくなっていきます。心の病の原因であるストレスは、どうすれば解消できるのか。最も簡単で効果的なストレスへの対処法は、皆さんが毎日無意識のうちに行っている「呼吸」です。
私たちが消化や血液の循環、発汗やホルモンの分泌といった複雑な生命活動を円滑に行えるのは、自律神経が体をコントロールしてくれているからです。この神経には、交感神経と副交感神経の2種類があって、アクセルとブレーキの役割をしています。ストレス時には交感神経が優位になり、心拍数が上がる。一方の副交感神経は、体を休めて疲れを解消するリラックスの役割を担っています。
体を無意識のうちにコントロールしてくれている自律神経を唯一、コントロールできるもの──それが呼吸です。なかでも「ゆっくりと深い呼吸」を行えば、副交感神経が優位になり、不安やストレスを解消することができます。
それだけでなく、「ゆっくりと深い呼吸」には、心のバランスをとる神経伝達物質「セロトニン」の分泌を促したり、酸素供給能力と二酸化炭素排出能力を劇的に向上したりする効果があります。加えて内臓を活性化したり、全身に血液を流す力が高まったりすることで、さまざまな体調改善効果が期待できます。
呼吸は科学であり、きちんとした裏付けと手順があります。そうした基本ルールを押さえておかないと、「思いのほか効果が出ない」ということになりかねません。まずは“ポジティブ呼吸法”を実践するための6つの基本ルールを紹介します。
【1】よりスムーズに空気を取り入れられる姿勢で行う。具体的には上半身(首、肩、胸、腕)の力を抜き、腹部に力を入れ、体の重心がおへその下側に来るようにする。
【2】まず始めに「フー」と自然に息を吐く。
【3】息の吐き方は、呼吸法によって「鼻から吐く」「口から吐く」「鼻と口の両方から吐く」の3パターンがある。(本書ではいくつもの呼吸法を紹介しており、それぞれの呼吸法に適した吐き方をお勧めしている。)
【4】息を吸うときは、必ず鼻から吸う。
【5】息を吐く時は下腹に力を入れ意識して吐き、息を吸う時は自然に任せて吸う。
【6】呼吸法が示す息を吐く時間、吸う時間の目安にこだわらず、自分が「心地いい」と感じる呼吸でOK。
──以上が6つの基本ルールです。