ドラマの制作者もネットでの“評判”を無視はできない時代だ。視聴率とはまた別の指標として参考にしているに違いない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が、週末のネットを騒がせているドラマについて分析した。
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ドラマ撮影延期のケースも続く中、深夜帯ではコメディエンヌたちがぶっ飛んだ演技を見せてくれています。羽田美智子の『隕石家族』(フジテレビ系土曜日午後11時40分)、水野美紀の『浦安鉄筋家族』(テレビ東京系金曜深夜0時12分)と、いずれも「家族」が看板のギャグドラマ。
いや、もう一つ忘れてはいけないファミリーギャグがあります。そう、「南青山のエイベックス」という「ファミリー」をドラマ化した『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系土曜午後11時15分)です。
物語は……浜崎あゆみがスターダムへと駆け上っていった道のりを小説にした同名原作のドラマ化。安斉かれん(アユ役)・三浦翔平(マックス・マサ役)の二人を軸に90年代の音楽業界の光と影と愛を描く、という触れ込み。蓋を開けてみると……シリアスな業界モノというより「ギャグドラマの真骨頂」「腹筋崩壊」と注目され、ネット上での“バズり”を狙うスタンスも感じられます。これがギャグ作品だと言えるのは、できるだけ物語の筋に「感情移入できないよう」、人間関係のストーリーに「熱中しないよう」、醒めるための周到な仕掛けが複数用意されているからです。
例えば、マサ役・三浦さんの「俺の作った虹を渡れ!」に代表される大げさなセリフ。浜崎あゆみ役・安斉さんの人工的な輪郭・声色、サイボーグ感満載の実在性のなさ。レコード会社社長・大浜役の高嶋政伸さんは、目を剥くヒール役演技で既視感ありあり。あれは『黒皮の手帖』の大手予備校理事長役だったか。意図的に演技を被らせているということかもしれません。
中でも象徴的なのが、マサの秘書、礼香役の田中みな実さん。海賊風の眼帯(オレンジ色)が意味不明で、アユへの嫉妬を増幅させて「彼女しぶといですよ、ゴキブリみたいに」と周囲をそそのかしたり、陰湿ないじめぶりを展開。狙いすぎで鼻白むほど。かつての音楽業界の雰囲気を再現したり恋愛・人間関係をドラマとして高めていくことよりも、SNSの反響を当て込んだ今風「エンターテイメント」と言えるでしょう。
マサのモデルは言わずと知れたエイベックス会長・音楽プロデューサー松浦勝人氏。ご自身もSNSに参画して盛り上げ役に。ドラマに合わせて浜崎さんとのツーショットのみならず、「壁ドン」写真までアップして、笑いをとることも含めて「戯れ」ぶりを披露してくれています。