全国に先駆けて2月27日から小中学校の一斉休校を行った北海道。札幌市児童相談所に寄せられた3月の児童虐待通告件数は、約150件。これは、前年同月比の1.5倍の数字だ。明らかにコロナ自粛は、家庭、ことに子どもを追い込んでいる。
それは日本に限った話ではない。国連のアントニオ・グテーレス事務総長はビデオ演説(4月16日=米現地時間)で、児童虐待やDVの兆候を早期につかむ重要な仕組みが失われ、本来ならば守られるべき場所で子どもたちが暴力にさらされていると警鐘を鳴らした。
外出できないいら立ちから、机に向かわず一日の大半をダラダラ過ごすわが子が目に入れば、つい小言を言いたくなる。怒鳴りつけてしまうこともあるはずだ。ではこの悪循環から、どう脱却すればいいのだろうか。
『「過干渉」をやめたら子どもは伸びる』(小学館新書)の著者の1人で、教育評論家の尾木直樹さんは、「そうした気持ちになることは充分理解できる」としながらも、こうアドバイスする。
「いま私たちは、この先どうなるのか見通しが立たず、言いようのない不安にさいなまれていますよね。でも、考えてみてほしい。子どもだって、同じようにストレスや不安にさらされているということを。
コロナ禍でダメージを被っているのは、大人も子どもも同じこと。いまは、わが子をか弱い存在としてではなく、“困難な時代をともに乗り越えていく同志”ととらえてほしい。家族=仲間として、この難局を乗り切るのです」
さらに尾木さんは、子どもの不安を解消するのに必要なのは、「言う」ことではなく「聞く」ことだと話す。
「小言は横に置いて、まずは子どもの声を聞いてください。“その不安な気持ち、わかるよ”のひと言が、お子さんを救うはずです」(尾木さん)
◆何もしていない時間が脳を育てる
同じく同新書の著者で、校則ほか学校における不必要な干渉を排した学校として知られる東京・世田谷区立桜丘中学校前校長の西郷孝彦さんは、「いまこそ一歩引いて子どもを見守ってほしい」と話す。
「外にも出られず、家にいる時間が長い分、勉強など親が重要視することに費やす時間より、ダラダラと過ごす時間の方がどうしても長くなる。そんな子どもを見て、ついイライラしてしまうでしょう。
でも、考えてみてください。人生でこんなに何もしなくていい時間を過ごせることなど、そうあるでしょうか。65年間の私の人生を振り返っても、学生時代は勉強や部活、教員になってからは常に時間に追われ、これほどぼんやりできる時間はありませんでした。
子どもにとって、この“何もしていない時間”こそが、成長のために必要な時間なのです」(西郷さん・以下同)
実際、ボーッとする時間に脳で記憶を整理したり、無意識が浮かび上がって、いいアイディアがひらめいたりするといわれる。それは大人も同じだ。
「“窓辺で何もしないで、ボーッとしている時間が本当の時間である”と言ったのはフランスの作家、フランソワーズ・サガンだったでしょうか。私もいま、その言葉をかみしめています」