新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出自粛が求められる一方で、急増しているのが「家庭内感染」だ。家族の中の誰かが外からウイルスを持ち帰り、自宅で待機している家族にうつしてしまうケースが増えているのだ。5月2日には、新規感染者の160人のうち、感染経路が判明した90人弱の中で実に33人が家庭内感染だったことが明らかになった。東京都福祉保健局の担当者はその日の会見で「4月24日時点では、家庭内感染がおよそ14%だったが、5月2日には38%まで上がっている。家庭内感染が広がっている」と危惧した。
「大前提として、ウイルスを自宅に持ち込むリスクをできるだけ減らすことが重要です」と語るのは、国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さん。もちろん自宅にもともと新型コロナが存在しているはずがないので、外出先で用心することは大事だ。その上で一石さんが提案するのは「室内の区分け」だ。
「病院や高齢者施設などで徹底されているウイルスの汚染度の『区分け』は、自宅内でもしっかり行うべきです。
ウイルスが付着するリスクに応じて、最もリスクが低いクリーン区域のグリーンゾーン(キッチン、リビング、寝室など)、最もリスクが高い汚染区域のレッドゾーン(玄関)、そしてその中間の注意区域のイエローゾーン(風呂場、洗面所、脱衣所など)に自宅を区分けして、ウイルス付着の可能性がある外着やかばんなどはグリーンゾーンに持ち込まないようにしてください。
イエローゾーンは利用するたびに換気するようにして、触れたところはアルコールや次亜塩素酸ナトリウムで洗浄しましょう」
リスク軽減のため、帰宅時は服を着替えるだけでなく、頭髪などに付着したウイルスを除去するためにすぐにシャワーを浴びることを心がけたい。ちくさ病院の内科医・近藤千種さんがその際の注意点を指摘する。
「レッドゾーンの玄関で脱衣して、グリーンゾーンのリビングなどを経由せずバスルームに直行します。そのとき、衣類はウイルスが付着しているかもしれない汚れた部分を内側に裏返して洗濯機に投げ込みます。シャワーを浴びる際は、家族とタオルを共有することも避けてください」
『新型コロナウイルス感染症-市民向け感染予防ハンドブック-』を作成したメンバーの1人で、東北大学大学院助教の吉田眞紀子さんは、「洗濯で気になるなら熱湯消毒をしてもいい」と指摘する。
「80℃の熱湯が入ったバケツに衣類などを10分浸けてから洗濯すれば、より殺菌効果は高まります」
そもそもウイルス一般は高温に弱い。40℃の気温や水温で活動は弱まり、60℃でおおよそ死滅するとされるが、新型コロナは実態が不明な部分が多いので、厚労省も「病院で使用する寝具は80℃で10分間殺菌すべき」としている。
◆玄関・風呂・食事…自宅でのウイルス対策の数々
帰宅後、手持ちのものをそのまま「グリーンゾーン」に持ち込まないことも大切だ。
「スマホやかばんなど、外から持ち込むものは帰宅後に玄関先のレッドゾーンにいったん置き、アルコールなどで拭いてから居間に持ち込みます。スーパーで買い物した商品なども、クリーン区域に持ち込む前に消毒することをおすすめします」(近藤さん)
汚染区域とクリーン区域を分けるなどして外部からのウイルスを水際で遮断できても、完全に安全とはいかない。