大型連休ともなれば、観光列車を撮影する鉄道ファンの姿が恒例だったが、2020年は緊急事態宣言のなかで、そんな光景も見られなかった。どうにもならないならエア旅行で楽しもうというのか、SNSでは自宅にいながら鉄道写真や動画を「#自宅で撮り鉄」として公開する人たちが出現している。ライターの小川裕夫氏が、鉄道模型と身近な材料、ちょっとしたテクニックで夢の撮り鉄体験を楽しめる試みについてレポートする。
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新型コロナウイルスの猛威が止まらない。
緊急事態宣言の発出から約1か月が経過した5月4日、安倍晋三首相はその期限を5月末まで延長すると表明した。3月半ばから呼びかけられた外出自粛の期間も含めれば、春休み・GWという絶好の行楽シーズンがすべて台無しになった。
自宅で過ごす時間が長くなる中、アーティストの星野源さんはインスタグラムに楽曲「うちで踊ろう」を投稿。その楽曲に合わせてダンスを披露する芸能人やスポーツ選手も次々に現れ、垣根を超えたコラボが実現した。
コロナ禍という不遇にあっても、多くの人が知恵を出し、工夫を重ねて自宅で楽しめるコンテンツを次々に生んでいる。
コロナ禍は鉄道会社に大きな経済的損失を与えているが、鉄道ファンも外出自粛によって活動を大幅に制限されるなど苦しみの渦中にある。
列車に乗ることが好きな”乗り鉄”は言うまでもなく、撮ることが好きな”撮り鉄”も、近所の線路端ぐらいしか出かけられない。
テツ活動が厳しく制限される中、KATOブランドで知られる鉄道模型メーカーの関水金属がツイッターで「#自宅で撮り鉄」という新しい楽しみ方を提案。長期化していたSTAY HOMEの倦怠感も手伝って、鉄道ファンの間で一大ムーブメントを巻き起こしている。
「これまで、弊社の公式アカウントは新製品の案内といった情報ぐらいしかツイートをしていませんでした。しかし、緊急事態宣言によって外出が困難になり、自宅でも鉄道ファンが楽しめることはないだろうかと考えたのです。そこで、”#自宅で撮り鉄”を始めることにしました」と話すのは、関水金属営業部営業2課の担当者だ。
鉄道模型は高価な玩具でもある。また、製作のための工具や道具、材料を用意しなければならない。さらに、大きなジオラマを製作すると、部屋の大部分が占拠される。ジオラマ製作に広い部屋は不可欠なため、昨今の住宅事情を考慮すると、模型鉄は簡単に手が出せる分野ではない。
「”#自宅で撮り鉄”は、そうした鉄道模型の既存概念を打破する試みでもあります。専用機材・工具がなくても、厚紙やプラ棒といった簡単に入手できるモノ、もっと言えば家にあるモノを活用するだけでもかっこいい鉄道模型写真を撮ることができます。そもそも、東京都はコロナ禍で鉄道模型店を休業対象にしました。鉄道模型店の多くが休業しているのに、専門店でしか入手できない専門的な機材や道具を使う必要があるなら”#自宅で撮り鉄”の意味がありません。あくまでも、鉄道模型が誰でも手軽にできることを伝えたかったのです」(同)