新型コロナにともなう緊急事態宣言が延長され、外出やスポーツも自粛せざるを得ない状況が続いている。特に、身近なスポーツであるランニングファンは自宅トレーニングなどで気を紛らわしているものの、相次ぐ大会中止により、彼らを取り巻く環境が大きく変わろうとしている。市民マラソンに詳しいライターはこう指摘する。
「3月以降、全国で約500の市民マラソンレースが中止になり、そのほとんどで参加費が返金されなかった。対応に法的な問題はないが、レースを気軽に楽しんでいたランナーは、“予想外の支出”を経験したことで、参加自体を慎重に考えるようになった。来シーズン以降のランニング市場に影響があるでしょう」
今シーズン、100万人以上が市民マラソンにエントリー(参加申し込み)した。彼らは5000円前後から1万円以上のエントリー費を支払っていたが、大会側は、申込時に提示される「(積雪や地震などによる中止以外の)大会中止の場合、返金はいたしません」(東京マラソンのエントリー規約。エントリー料:1万6200円)といった規約に基づき、返金しない決定をすることがほとんどだった。
ランナーからは「この状況だから仕方ない」という声が上がる一方で、「公式記録を得ることもコースを楽しむこともできなかったが、参加費はなにに使われたのか」といった疑問の声も噴出した。多くの大会運営側が、収支の詳細を公開しないことが大きな理由だ。
大会運営は、企業や自治体、経済団体などが実行委員会を作り、ランナーの参加費や協賛金、補助金などで予算を組む。ランナーから集めた参加費は記録測定機器の調達や警備、コースを整えることなどに使われているとされる。協賛金はエイド(補給食)や記念品に使われ、補助金は「スポーツツーリズムによるMICEの推進とスポーツ機会の創出」(静岡市。静岡マラソン)として、大会の盛り上げに支出されるケースが一般的だ。