新型コロナウイルス感染症で心配されるのが、脳梗塞の併発だ。米マウントサイナイ病院の報告では、新型コロナに感染した50才未満の患者が、脳梗塞を併発した症例が2週間で5人に達した。
同病院の脳神経外科に勤務する日本人医師の重松朋芳助教が話す。
「いままでは、50才未満の若い患者が脳梗塞を発症するのは、2週間に1人未満でした。新型コロナの感染拡大とともに脳梗塞の患者が急に7倍になったので、『絶対におかしい』と思いました。しかも5人の患者はいずれも、脳梗塞の危険因子である糖尿病、高血圧、高脂血症などの持病はなかったのです」
新型コロナウイルスに感染すると脳梗塞を発症しやすくなるのか。キーワードとなるのは、血の塊である「血栓」だ。
「これまでの症例などから、新型コロナは血管の内側の細胞に侵入し、血が固まりやすくなる状況をつくりだすと考えられます。その結果生じた血栓が血管を通って脳に到達すれば脳梗塞になり、心臓に向かえば心筋梗塞のリスク因子になる。
新型コロナで肺炎が重症化するのも、肺の中にある細かな血管のいたるところに血栓ができて、循環が悪くなるからだと考えられます」(重松さん)
新型コロナ感染者の症状として報告されている、しもやけやじんましんなども、血栓が関連するとの指摘もある。
さらに突然死にも血栓がかかわっている可能性があるという。日本では4月15日、発熱症状で自宅療養していた都内の男性(57才)が朝は元気に妻と会話していたにもかかわらず、同日夜に急に亡くなった事例がある。これと同様の突然死が世界でも多発しているというのだ。
「新型コロナの登場以降、ニューヨークでは自宅死亡に対する救急隊の出動が4倍に増えたといわれます。新型コロナに感染して血栓ができ、それが脳梗塞や心筋梗塞を引き起こした可能性が大いに疑われます。
脳梗塞は時間との闘いで、症状が現れたらすぐに治療が必要です。医療側も脳梗塞患者に対しては、最初から新型コロナとの関連を疑う体制が必要です」(重松さん)