数々の名曲を手掛けた作曲家古関裕而氏とその妻をモデルにしたNHK連続テレビ小説『エール』。ミュージカル俳優など、多くのミュージシャンがキャストとして登場し、ドラマを盛り上げている。音楽ドラマとしての魅力が加速する『エール』について、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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民放の春ドラマが延期に追い込まれる中、3月30日のスタートから順調に放送を重ねて視聴者を喜ばせている朝ドラ『エール』。世帯視聴率もGW前あたりからジリジリと上がり、現在は21%前後の高水準を記録しています。
加えて、古山裕一(窪田正孝)と関内音(二階堂ふみ)が結婚し、東京で暮らしはじめた5月11日からの第7週は話題性もアップ。RADWIMPSの野田洋次郎さんやミュージカル俳優の山崎育三郎さんが登場し、さっそく野田さんに弾き語りのシーンがあるなど、いよいよ同作のコンセプトである音楽ドラマに本格突入した感があります。
実際、これまでは恩師役で森山直太朗さんが出演していたものの、音楽シーンは子役や、二階堂ふみさん、柴咲コウさんなどの歌唱力がある俳優ばかりだっただけに、野田さんらの登場で一気にシフトチェンジしたのではないでしょうか。
◆ミュージカル界のスターが次々に登場
2人以外にも音楽系のキャストは多く、12日放送の第32話には音のライバル・夏目千鶴子役で小南満佑子さんが出演。小南さんは10歳のときから世界を目指して声楽を学んできたミュージカル女優でこれがドラマ初出演であり、何回かオペラアリア(独唱曲)を歌うシーンがあるそうです。
また、同様にミュージカル界のスターとしては、柿澤勇人さんと井上希美さんも歌手役で出演。しかも柿澤さんが演じるのは藤山一郎さんがモデルの山藤太郎、井上さんが演じるのは音丸さんがモデルの藤丸であり、それぞれヒット曲の「丘を越えて」「長崎の鐘」、「船頭可愛や」を歌うシーンがあるようです。
ちなみに、「丘を越えて」は古賀政男さんがモデルの木枯正人(野田洋次郎)が作曲、「長崎の鐘」「船頭可愛や」は古関裕而さんがモデルの古山裕一が作曲した曲。窪田さん、野田さんが演じる作曲家との出会いで、歌手たちの人生が変わっていく様子が描かれるのでしょう。
今後も作曲家の裕一が主人公で多くの曲を作っていく物語である以上、それを歌う歌手役が必要。ミュージカル俳優、歌手デビュー済みの俳優、アーティストなどの出演はまだまだ期待できるのではないでしょうか。
そんな音楽の才能にあふれたキャストたちが演じるのは、当時の超一流たち。「超一流の才能があるからこそ一筋縄ではいかない」という個性派キャラをどう演じるのか? 歌だけではなく、その演技も楽しみのひとつです。
◆ミュージカル発展に貢献した古関裕而