高齢者にとって、どのように自らの死を迎えるかは遠い問題ではない。
一般に、耐え難い苦しみに襲われている患者や助かる見込みのない末期の患者が、医師の力を借りて自らの意思で死を選ぶことを「安楽死」、患者の意思で積極的な延命治療を行なわないことを「尊厳死」と呼ぶ。政治評論家の小林吉弥氏(78)はこう指摘する。
「日本では安楽死が認められない一方で尊厳死の法律がなく、医療現場では事前に患者本人が希望してもそう簡単に人工呼吸器を外せないのが現状です。『譲カード』が提起するのは、自らの意思で死を選ぶ尊厳死をどう考えるかという問題です。私は譲る、私はダメという個人レベルの問題ではなく、社会全体が考えるべき課題です」
※週刊ポスト2020年5月22・29日号